光陰世界 05
カミュがデルカタールに取りに戻ったのは赤色のオーブだった。しかしそれを隠していたスラム街のゴミ捨て場を漁っても漁っても見つからない。なんと彼の弟分であるデクがオーブを王に献上し、その謝礼金で貴族街に店を構えていたのだ。 これだけを聞くとデクがカミュを裏切ったかのように聞こえるが、彼にも考えあっての行動だった。謝礼金を元手に商売を成功させたデクは兵士に賄賂を贈り、牢屋の監視を緩くしてもらっていたのだ。その後のオーブの行方もきちんと掴んでいるようで、デルカタール神殿で安置しているそうだ。 3人はその情報を頼りにナプガーナ密林経由でデルカタール神殿を目指すことになった。
「命の大樹に愛された子ねぇ。なんでイレブンなんだろ。」 「そんなの僕が知りたいよ。」
その道中おきた不思議な現象にレイナが首をかしげるが、その疑問に答えられる人はいなかった。 世界のあちこちにある命の大樹の根っこ、その一つがナプガーナ密林にあった。イレブンが触れると一同揃って同じ白昼夢を見た。イタズラ好きの小悪魔が木こりを犬の姿に変え、どこかの宝箱に隠れるシーン。3人は半信半疑でその宝箱を探すと、どうやらあの白昼夢でみたことは現実で起きたことらしい。ミイラ取りがミイラにならぬよう気を付けながら、いたずらデビルを倒すと黒い犬が人間の姿に戻ったというわけだ。 木こりによると世界には命の大樹に愛された人がおり、大樹の根はそんな人間に力を貸してくれるらしい。おとぎ話だと思われたそれは、きっとイレブンが勇者であることを示しているのだろう。
「でもそのおかげであの人を助けることができなのは良かったと思うよ。」 「あ、それは同感。」
本人も含め、勇者とはいったい何なのか分からないが、何か特別な加護を持つ存在だということは今回の件で判明した。分からないことだらけだけど、だからこそ利用できるものはフル活用しなければ勿体ない。それが人助けとなるなら猶更だ。
「情けは人のためにあらずっていうし?これからも困っている人を助けていけば、イレブンの風評被害も減っていくでしょ。」
レイナの当面の目標は、人畜無害な友人の名誉回復だ。
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