光陰世界 04

 かなりの高さを飛び降りたイレブン達3人だったが、森の木々がクッションになったのか怪我はひっかき傷程度だった。骨もおれずに済んだのはよかったが奇跡なんてレベルじゃない。流石の兵士達もここまで追ってこれなかったようだ。
 イレブンとしては城でデルカタール王にイシの村に向かうよう命じられたホメロスが気にかかったが、今イレブン達がイシの村に行っても鉢合わせするだけだ。それでは地下牢から脱出した意味がない。まずはデルカタールのスラム街にあるカミュの荷物を回収してから、イシの村を目指すことにした。
 カミュから見たイレブンは不思議な空気をまとう少年だが、それ以上に強烈なのは彼の連れであるレイナの方だった。地下牢でグレイグとのやり取りを耳にしたときは随分とのんきな女だと思ったが、共に行動するにいたり変人奇人の類だと断言できた。

「突撃!お前が今日の昼ごはん!」

 なんせ率先して魔物を狩りに行ったと思いきや、何のためらいもなく体をさばいていくのだから。本来魔物の肉など臭みや毒で喰えたものではないに、錬金術とやらを駆使して美味しい食材にするので謎である。

「イレブン、お前もよく躊躇なく食べられるよな。」
「何度か食べれば流石になれるよ。」

 げんなりとした顔をするカミュにイレブンは苦笑するしかない。イレブンも最初こそ度肝を抜かれたが、冷静に考えれば普通の野生動物も下処理するので大差ない。そのまま食べると体を害す食材を、発酵させたり加熱したりすることで毒抜きする知恵はこの世界にもある。彼女の場合その手法に錬金術が加わっただけだ。

「そういうもんか……?あいつがいる限り、食料に困ることなさそうなのは助かるが。」

 今やお尋ね者の3人だ。魔物がいくらかお金を落としていくとはいえ限りがあるし、傭兵として稼ぐこともできない。できる限り出費を抑えたい彼らにとって、レイナの錬金術は非常にありがたい。
 それに彼女は女であることを無暗に主張することもなければ、女扱いするなと怒ることもなかった。異性だからといって特別扱いする必要のない彼女は、共に旅するには気軽な相手だった。

「ただ、自分が女だってことをもうちょっと自覚してほしいけどな。」
「……それは、うん。」

 いくらスッパツを履いているとはいえ、スカートがはためくのを気にせず斧を振り回す。そんな彼女の姿を思い出し溜息つくカミュに、イレブンも否定することができなかった。
 倒した魔物を解剖するレイナに2人の会話が届く様子はない。

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