06



「本当に大丈夫なの?」

「くどい。大丈夫っつってんだろ。」


うん。確かに、神田くんが言った通り午後には熱が下がってたけど、まさか普通に歩けるほど回復するとは思ってなかったよ。大丈夫っていうか完全回復してるよね。大事をとって一日様子をみるとか必要ないほど元気っていうか。


「若いってすごい。」

「体の造りが違うんだよ。」

「なにそれ。私のことばあさんって言いたいの?」

「早く行くぞ。」


あぁ、若いっていいなぁ。っていうか本当に大丈夫なんだね。小一時間寝たら「腹減った。なんか作れ。」だもんなぁ。うどん作ったらぺろりと食べあげたもんなぁ。体の造りがどうこうの問題じゃない気がするけど、元気になったならいいや。





「神田くーん。選ばないなら勝手に選んじゃうよ。」


近くの大型スーパーにやってきて服売り場に来たはいいもの、神田くん服にあまり興味がないらしく「これはどう?」とすすめてみても反応がない。彼は動きやすければなんでもいいと言うけれど、神田くんぐらいの子供の相手なんてしたことがないから、どこから手を出していいのかもわからない。勝手に彼が選んでくれた方がとっても助かるのだが…。


「なんでもいいなら下着も勝手に選んじゃうぞー。」


そう冗談のつもり、というか一人言ちっくにポツリと言えば、たいして興味無さそうに私の後ろを歩いていた神田くんが急に方向転換してきて私が適当に選んだ下着を掴んだ。


「俺が選ぶ。お前はそこら辺で待ってろ。」


と言われた…。
流石に下着を選ばれるのは恥ずかしかったらしい。キャラクターの絵柄がついたパンツを買ってやろうと思ってたんだけどなぁ。私は言われた通りそこら辺で待ってて、会計の時だけ神田くんの隣に立った。会計中、ビニール袋を少し珍しげに見ていた神田くんが言った。


「これで今夜あたり帰れたら無駄だな。」

「大丈夫。ちゃんと倍返ししてもらうから。」

「あぁ、ちゃんと返す。三倍返しでもいい。」

「言ったな。」


本当に三倍返ししてもらうからな。ちゃんと払ってもらうからな。大学生の一人暮らし舐めるなよ。切羽つまりすぎて給料日前とか本当に何食べていいかのかわからなくなるんだからな。「ありがとうございました。」と店員さんから商品を受け取れば神田くんが「持つ」と言ってくれた。…意外に紳士的な一面を見てしまった、と少し驚いていると神田くんが急に立ち止まった。


「どうしたの神田くん。」

「………………。」


私の声に神田くんは返事も何もせず、ただ目だけを後ろに向けるような動作をしたので何か後ろにいるのかと私が振り向けば、その前に神田くんが先を歩いた。


「ナマエ帰るぞ。」

「え、あ、うん。」


後ろを振り向きかけた私だけど、神田くんが私の手を取って歩き出したので、結局後ろに何があったのか確認はできなかった。ただ、私の手を取った神田くんの手は、子供のくせにやけにデカいなと感じた。


神田くん、成長したらきっとすごく大きな男性になるんだろうなと思った。


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