「…率直に言おう。

御宅で飼い慣らしてる狐を一日貸して頂きたい。」





シン…と静まりかえる客間には、副長と不在の局長の代わりにいる沖田隊長、そして高級そうな着物を羽織る何処ぞのお偉いさんが座っていた。


…それを覗くのは趣味が悪いかもしれないが、うちの隊長の事なら話は別だ。





この前の任務で、俺を庇い大怪我を負った彼女。

罪悪感で潰れそうになっている俺に、彼女はまだ入院中だったのにも関わらず優しく声をかけてくれた。


「神無月さん、気にしないで下さい!

でも、退院したらビシバシ任務に連れていくので、覚悟してて下さいよー!」


自分よりも年下で尚且つ女性だというのに、芯の通った隊長にずっとついていこうと決意した。




そんな中、この話。


人扱いではない、物のような言い回しに怒りがこみ上げてくる。





「…あれはウチの管轄です。
こっちにはこっちの予定もある。」



「勿論、タダでとは言わん!
資金繰りをしてやろう!真選組も何かと金がいるだろう!
上にかけあってやる!」



必死な相手に副長は深くため息をつき、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

その間、隣の沖田隊長が無言なのも少し気になった。




「……今週の土曜日。その日だけなら。」



「ほ、本当か!!
では、頼むぞ土方!!!」




副長の返事に目を丸くしたとき、上からクスクスと笑う声に肩が飛び跳ねる。



「た、隊長?!」


「いやー、土方さんも演技上手いですよねー。
あれ、内心ではガッツポーズしてますよ、絶対。」



俺の頭の上から襖を覗く彼女は、お偉いさんが部屋から退室したと同時に襖を盛大に開け、部屋に入っていく。




「勿論!私の報酬と監察への予算は確保できるんですよね?!」


「おめーの抜けた穴、今までどこでカバーしてたと思ってんだ。
一日ぐらいリハビリしてこい。」


「それって実質タダ働きじゃないですか!」


ギャイギャイと口論し始める副長と愛隊長を呆然と眺めていると沖田隊長と目が合った。



「おめーの隊長様は成金童貞豚野郎と一日デートするらしいですぜ。」


「え?」


「もっといい言い方あるでしょう。


女性経験のないお偉いさんの息子さんが物凄くタイプな人に化けて、女性への免疫をつける…とか。」


そう言うと彼女は振り返り、此方に頭を下げる。


「神無月さん、すみません。
土曜確か稽古の約束を…」


「い、いえ、大丈夫です!
自分が勝手に頼んだので!!」


顔は相変わらずのお面で見えないけど、中で申し訳ない表情をしているのは読み取れた。


正直少しショックだったが、仕事ならば仕方が無い。




「タダ働きかー、

まあ惚れさして、とことん真選組に貢いでもらいましょうか。」



「思う存分転がしてこい。」



副長が机に乗っていたお偉いさんからの資料を渡すと、此方に軽く挨拶して
彼女は部屋を出て行った。







「おい、総悟。お前いいのか。」


自分も退室しようと立ち上がったとき、副長の声に思わず立ち止まった。




「いいって何の事ですかィ?」


「…お前土曜は抜けらんねぇぞ。」




副長のその言葉に、沖田隊長はハッと呆れて笑ったあと、

ゆっくりと此方を振り向いた。





目が合い、思わず体が固まる。




「化けてるときは、愛じゃねぇんで。
今さらどーも思わねぇ、


けど、



もし、素のあいつに少しでも擦り寄る野郎がいたら…

俺ァ何するか自分でもわかんねぇなァ。」






沖田隊長が歪んだ笑いを浮かべると、
背筋が凍りつく。




冷や汗がダラダラと流れたとき、沖田隊長の手が鞘に触れた。






思わず、




「す、すみませんでしたァアアアアアアア!!!!!!」





全力で謝ったあと、廊下へ全速力で駆け出した。




















(やり過ぎだろ。)
(刺す釘は深い方がいいんでさァ。)




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