「監察長! こ、これ…、よかったらどうぞ…!」
「あ、ありがとうございます。」
お面の下で引きつりながらも、差し出された物を受け取る。
綺麗にラッピングされたものは、今女子に大人気らしいお洒落な甘味処で買えるお菓子だと予想して、憂鬱になった。
「では! また、監察長と仕事出来るのを楽しみにしてますので!」
受け取ってもらった事に満足した彼は(確か三番隊の人だった筈…)
私とは正反対の笑顔を浮かべて廊下をかけて行った。
「…はぁ。」
大きなため息をついて、自室へと戻る。
退院してからというもの、私の性別や素顔が明らかになってしまったせいで、 女子に飢えている方たちが、こぞって部屋を訪れるようになってしまった。
「いらないモテ期だー。」
「普通のヒロインなら、鈍感に対応するのにお前ときたら…。」
「自分への好意など、総悟さん以外なら簡単に読めますよ。
あー、どうしよう…。」
私の部屋だというのに漫画片手に思う存分寛ぐ恋人の隣に座り込み、机に貰った物を置く。
傷が癒えるまでは、自室で書類関係の仕事を言い渡されてるわけだけど、こんなターゲットにされるぐらいなら早く任務に行きたくなってしまう。
「…暫くすれば落ちつくんでしょうけど。」
「まあ、もう二度と来ねェモテ期楽しみなせェ。」
「…そう言いながら、影で彼らを粛正してるの私知ってますからね!
ほどほどにして下さいよ!」
「……可愛いヤキモチじゃねェか。」
彼の手にかかり、ボロボロになった人達を最近良く見かけるけど、その度に申し訳なくなる私の事ももう少し考えてほしい。
私達が恋仲になったと報告する事が一番の解決策なんだろうけど、 私も総悟さんも聞かれない限り、わざわざ言わない性格だから、中々難航している。
…まあ、元から仲がいいと言われてたから、周りは私には気づいてないみたい。
「さて。」
「…食べんの?」
「一応貰い物ですから。
入院生活で、いつもの維持していた体重からかなり減りましたし…。」
ガサゴソと可愛らしいラッピングを外し箱を開けると、中に小さいチョコレートが綺麗に並べられていた。
一つ一つデザインされたチョコレートを見ると、女の子が好きそうだなあとぼんやり考える。
「いただき……っあー!!!」
「うめェ。」
「うめェじゃないですよ!意地汚いなー!」
私が食べようとしたホワイトチョコレートは、既に総悟さんの口の中で。
流石に貰い物の最初の一口を取られるのは、なんか悔しい。
「この口が…この意地汚い口が…」
「突くな突くな。
…あ。」
腹いせに、総悟さんの柔らかいほっぺを突いていると、急に手首を掴まれる。
さっきまでいつも通りだったのに、何かを思いついたのか、総悟さんは嫌な笑みを浮かべた。
あ、これ、ヤバイやつだ。
「このチョコ欲しかったんだろィ。」
「いや、もう食べ終わったでしょう。
ホワイトチョコは諦めます。一口目ももう大丈夫です。私にはまだチョコ残ってます。」
「悪かった。 そのお詫びに、一個一個食べさしてやらァ。
…口で。」
「アホでしょ!あんたアホでしょ! 結構ですよ!!や、やめ…
あーー!!!!お面返せ!!!!」
ニヤニヤと録でもない顔をしている彼がチョコの箱を持ち上げる。
それと同時にお面を取られてしまい、右手も拘束中。
あ、駄目だ、これ打つ手ない。
「あいつに感謝しねぇとなァ。
…さて、楽しむか。」
こうなった彼はもう止められない。
引きつり笑う私にのし掛かる彼は、凄くいい笑みを浮かべていた。
(…やっぱり任務早めて貰おう。)
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