絶対零度。
今この場を表現する言葉はきっとそれしかない。



沖田さんと愛が喧嘩して3日。
この3日は地獄のようだった。


陰湿極まりない愛の嫌がらせをモロに受けた沖田さんがブチ切れ、その場にいる隊士達に当たり散らす日々。


何度、隊士達が本人同士でやれと思った事か。
…が、忍である愛は一向に姿を見せる事なく、3日目。


近藤さんのところにいた愛を監察全員で取り押さえて、今に至る。



「お久しぶりです、総悟さん。」

「…………。」


相変わらず面をかぶるその表情は読み取れないけど、その一言は冷ややかだ。


連れてきた客間である一室に二人が向き合って座っている。

ピリピリと肌を刺してくるような空気が漂う。…いきなり抜刀しても、おかしくない。

…自分の身も危なくなりそうなこの空間を興味本位で覗く、俺達は命知らずだと思う。




「…まだ怒ってんのかィ。」


「だいぶ、スッキリしましたけどね。

…なんで、あんな事したんですか?」






「……イラついたんでィ。」


「は?」



怪訝に首を傾げる愛と、真剣な顔で彼女を見つめる沖田さん。




「お前、前言ったじゃねェか。


『任務では接吻は当たり前。目的の為なら身体を売る事に抵抗はない。』って。」



「え、あ、はい。」





「アレが全部なくなりゃ、そういう事が出来なくなると思ったんでィ。」



そう言う沖田さんは目を伏せる。

…実際、俺たち監察に仕事を振るのは愛の役目で。
だから俺たちでも、彼女の任務内容は知らない。

…今ここの任務は土方さんから、まともな物しか流れてこない筈だけど、それ以上に自分を犠牲にして任務遂行する愛を、沖田さんなりに心配しての行為だったんだろう。


(まあ、心配より嫉妬が多いかもしれないけど。)


「………心配かけたみたいですみません。

…でも、」


「悪かった。」


「え?」


「あんな奴らから貢がれた物んじゃなく、…安いかもしれねェが俺が買ってやる。

任務で身体売らねェ条件で。」




覗いていた全員が目を見開く。

え?沖田さんが謝った??



「わかりました。


…こっちもすみませんでした。」



そう言った愛の言葉で一気に空気が綻んだ。

彼女の方も、そうやって心配された事が嬉しかったんだろう。
もう沖田さんと次の非番の打ち合わせをしている。




覗いてた全員で胸を撫で下ろし、仕事に戻ろうとすると、後ろからガチャっと音がした。


「お前ら、一体何してんでィ。」


その一言が聞こえたと同時に、俺たちは爆風の中に吸い込まれた。





無事終戦
(今度の非番は一日買い物ですよ、総悟さん!)





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