朝の賑わう食堂内。
まだ寝ぼけている人や、勤務時間が迫って焦っている人達が溢れている中で、ガラッと入ってきた人物にみんな目を開いた。


「この時間にお前が起きてるなんて珍しいな、総悟。」

「ひでーや、土方さん。
俺はいつだって真面目ですぜ。」


入ってきた人物は、部下が起こしにいかないと起きてこない(それでも起きない場合もある)沖田総悟本人で。

気だるそうに部下達に軽く挨拶し、朝からマヨ丼ならぬ、ただの豚の餌を食べる上司の前の席へだらしなく座った。


「お前飯は?」

「俺はこれがあるんで。」


そう言い、懐から出したのはウィダー◯ゼリー。

怪訝そうに見る上司を見て見ぬ振りをし、ゼリーに口をつけ、ぎゅっと絞る。


「それよか、土方さん。
愛の事なんですが、あいつ働き詰めじゃねェかと。」

「突拍子もねェな。
そもそも休みはやってんだろ。」


「あいつは潜入やら、神経使う事やってんでィ。
俺らと比べたらいけねェや。」





「……朝から、卑怯な手使うんじゃねェよ、愛。」


いろいろ察してしまった土方さんが、此方を見てため息をつく。





「卑怯が私の取り柄なもんで。」


今回は自信があった分、少し悔しいけど、彼のしないような満面の笑みを浮かべて土方さんをみると、水を吹き出したので、これはこれで良しとしよう。


「ゴホッ…。
…なんでまた総悟に化けてんだ。この為だけじゃねぇだろ。

つか、お前バレたら殺されんぞ。」


「いやー、なんというか、…勉強ですよ。
何故か総悟さんには、上手く化けれないんで。」


さっきすれ違った近藤さんにも、すぐにバレてしまい、肩を落としたばっかりだ。

顔の作りが違うんだろうか…気になるけど、研究しようもあの人の顔をジッと見つめるのが、何故か恥ずかしい。



「中々、上手くいきませんねー。
あの人には気を許し過ぎちゃって…、忍としてあるまじきですよ!」


「まぁ、任務でヘマしなきゃ問題ねェがな。」

「あ、その今度の任務なんですが、女で潜入が出来なくなりました。」


「はぁ?なんでだ?」


「このアホが、私のコレクションを売りさばきやがったので。」



頭に青筋立てて、顔を指さす。

私のコレクションというのは、任務中にターゲットから貢がれた物の事で、綺麗で高級な着物やアクセサリー類等々が部屋で大切に保管されていた。

まあ、個人的には全く興味ないし、趣味でもないけど、擬態中の小道具としては、充分過ぎる物だったので、たまに手入れしたり可愛がっていた訳だ。


「あろう事か売りさばいた金で旅行でも行こうなどと馬鹿げた事ほざきやがったので、昨日からシカト状態です。」

「あぁ、だから昨日お前姿見せなかったのか。」


「ほぼ屋根裏にいましたね。」


まあ、ムカついてた半分、彼に対して気を緩み過ぎてた自分に対しての情けなさ半分だったのだけど。


でも、一晩経っても気が済まなくて。


ニコッと笑うと、土方さんの顔が引きつった。


…残念ながら、この沖田総悟が私だと気づいてる人は食堂には土方さんしかいない。




「俺ァ、土方さんが好きなんでさァ!!」


「やめろ!!!俺を巻き込むな!!!」


「愛してるんでィ!!
あんたが近藤さんと付き合ってる事も知ってる!!
けど俺は気にしやせんぜ!!!」


「サラッと近藤さんまでブッ込むんじゃねェよ!!」


大声で叫ぶと、一気に食堂が騒ぎ出す。


え、マジで?!
夢だろコレ夢だろ?!
え?沖田さん?!
嫌がらせにしては真剣過ぎるよな…


「やっぱりこういう事したほうがスッキリしますね。」


「お前本当たち悪ィわ!!!」



彼が起きてくるまで、あと30分。

この恨み、晴らしてやろう!!




私の力、思いしれ
(親友でもしていい事と悪い事があります!)





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