中々ボロを出さない今回のターゲットにやきもきしながら、今日で張り込みがちょうど一ヶ月になる。
だいたい正午過ぎだっただろうか、追っていた者同士が接触して、やっと私の任務に片がつき、同時期に張り込み開始した退さんの方も、有力情報が手に入ったらしい。
「帰ったらご飯食べたい。」
「ゆっくりお風呂入りたい。」
「寝たい。」
「寝たい。」
退さんの拠点のこの民家に土方さんと総悟さんが来て、報告して終わり。
その二人を待ってる間に、退さんの方は意識が飛びそうで。 …まあ、この一ヶ月の私達の睡眠時間といったら、いつもの1/3あるかないかぐらいだしね。
そういう私も足元が少しぐらつくし、ギリギリの状態である。
「駄目だ…。…愛お茶いる?」
「私は大丈夫です…。」
眠気覚ましだと、退さんは立ち上がると台所へ向かう。
が、
「あ…だめ……。」
「…え?」
私の隣を通り過ぎようとしたとき、…限界だったんだろう。
此方に向かって倒れ込んで来て、自分の体を支えるだけで精一杯の私は案の定巻き込まれてしまった。
「……退さん生きてますか?」
大きな音を立てて、私を覆いかぶさるように倒れた退さんに声をかけるけど、顔のよこにある彼からはスーっと言う、寝息が聞こえきて、ため息が出る。
彼をどかそうにも、体力の限界にある今の体では難しい。
そのまま放置だな、と諦めたとき、のしかかっている重さがなくなり、自分の横に立つ人に顔を向けた。
「…お久しぶりです、総悟さん。」
「任務中に堂々と浮気なんざ、悪い女でさァ。」
「何が浮気ですか。」
ふと、隣を見ると彼に蹴飛ばされた退さんは壁にめり込んでいた。
…寝てるのか気絶してるのか、怪しいところだ。
「あ、報告します。 正午過ぎに、例の男二人が接触。 …ヤクの取引についての話でした。」
「へいへい。了解了解。」
起き上がるのも億劫で、総悟さんならいいかと寝ながら報告すると、腕を引かれ胡座をかいて座る彼に横抱きにされた。
「…何してるんですか?」
「土方さんが来て、ザキの報告聞くまでは俺は帰れねェから。その間、寝とけ。」
「いや、一人で帰りますよ。」
「流石に1人では帰んな。
……俺が心配なんでィ。」
え、と声を漏らすと背中をポンポンと叩かれる。 ワザと顔を逸らす彼の表情は伺えない。
…私は、人がいるところや気配を感じるとあまり寝れないし、ましてや熟睡なんてした事ないのに。
ドクドクと、少し早めの彼の心音と包まれた感覚が心地よくて。
私の意識は遠退いていった。
きっと、これは (…お前ら、…仲いいどころじゃねェだろ。) (土方さん、静かにしてくだせェ…。)
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