知らない世界
荒野に似た地形に車が走れるような道路が通っている、今日もレガリアは4人を乗せて走っていた。
結婚式にオルティシエと向かうはずだった彼等は、インソムニアの陥落によって帝国軍からクリスタルとインソムニア奪還の為の旅路を進む
「ノクト、もう時期日が暮れる…今日の宿泊場所を決めよう」
「そうだな…ホテルまでは後どれくらいだ?」
「大体1時間、と言う所だな」
「じゃあ、今日はキャンプだな」
「え〜!キャンプー!?」
「キャンプの何が悪ィんだよ」
「本当はシャワー浴びてぇけど…ま、仕方ねーよな」
「ちぇー、仕方ないかぁ」
グラディオの提案に口を尖らせるプロンプトだが渋々と納得した。ここからすぐ側にある標を探して車を走らせる…すると標がある事を知らせてくれる煙を見つけ、そこ目掛けてレガリアを走らせた。
すると突然、助手席にいたプロンプトがいきなり大声を出して車から身を乗り出す
「待って!イグニス!」
「なっ、危ないぞプロンプト!」
「ごめん!でもあそこに人が倒れてるんだ!」
「…やべぇな」
急ブレーキをし、プロンプトが指を差した先にはキュウキの群れの中に倒れている人だった。キュウキは円形になって群れを作り、今にも倒れている人に飛びかかりそうな勢いだ。確認したグラディオは、急いで向かおうとするが顔の横を突風が横切った
「行ってくる」
「おいノクト!」
剣を投げシフトをし、倒れている人がキュウキに襲われないように守りながら戦闘をする。幸いにも手こずらずにキュウキをすんなりと片付けると倒れている人の元へと戻り安否を確認する。倒れていたのは女性だった
「息はしてるな…おい、大丈夫か」
他の3人がこちらに駆け寄って来る。その間に女性に何度か声をかけるが反応は無く、瞳を閉じたままだった。
「さっすがノクト!早いなぁ」
「一人で勝手に行くなっつの」
「あんぐらい平気だろ」
「…変わった服装をしているな…目を覚まなさそうか?」
「何回か呼びかけたけど駄目そうだわ」
「そうか…ここは危険だ とりあえず一緒に標に連れて行こう」
全身真っ黒なローブを着ている女性を見て、イグニスは珍しいと反応する
グラディオが女性を横抱きし連れて行こうとするとプロンプトが何かを拾って持って来る。それは、まるで杖のようだった
「これ、この子のかな?」
「…そうかもしれない、起きたら彼女に聞いてみよう」
プロンプトは拾った杖を懐にしまうと、他の3人とともにレガリアに戻って行った
『…んん』
頭が痛い。それにものすごく身体がだるくて重かった。
ゆっくりと瞳を開けると、布で出来た天井が見える
(…テント?)
ゆっくりと身体を起こして周りを見渡すと身体には毛布が掛かっていた。
どうやら自分はテントの中で眠っていたようだった
(いつの間にテントで眠ったんだろう…)
自分が何をしていたのか、まったく思い出せなかった。
確かホグワーツがあの人に乗っ取られて皆で戦って…そこからが何も思い出せない。
誰かにオブリビエイトでもされたのか、いやそしたら全て忘れているはず…んんん、といくら考えても出ない答えに頭を悩ませる。
すると突然、テントの入り口のファスナーがジジジッと開いて金髪の姿が目に入った
「あっ、目が覚めたんだね!イグニス!この子起きたみたい」
「そうか、今行く」
突然の事にきょとん、としていると今度は先程の金髪ではない眼鏡を付けた人が現れ、
イグニスと呼ばれている。呼ばれた彼はブルーに視線を合わせてしゃがみ込んでくれた
「どこか痛い所はないか?」
『あ、えと 頭が少し…だけ』
「頭か、倒れた拍子に何処かにぶつけたのかもしれない。街が側にあれば医者に見て貰えるんだが」
『…私、倒れてたんですか?』
「ああ、道の端の方で倒れていたのを見つけたんだ」
『あ、えっと…助けて頂いてありがとうございます』
「気にしないでくれ。そうだ、もしお腹が空いているなら晩飯を食べないか?」
『え、流石にそこまでお世話になるわけには…』
「いいんだ、余って捨てるのも勿体ないしな」
『じゃあ、お言葉に甘えて…』
彼に導かれてテントを出ると、外では焚き火が行われて周りには囲うように椅子が5つ出してあった。空いている椅子に座るように促され腰掛ける。先程の2人以外にも人がいて椅子に座ってご飯を食べていた
「どこにも怪我無くて良かったぁ!あ、俺プロンプトって言うんだ。宜しくね」
『プロンプトさん、ですね。私の名前はブルー・サファイアです』
「ブルーちゃんね!俺の事は呼び捨てでいいよ、敬語も堅苦しいから無しで」
『あ、えーと…ありがとう。私も呼び捨てで構わないよ、他の方のお名前は…?』
「んーとね、この眼鏡の人がイグニスで大きい人がグラディオ、で…この仏頂面の人が
ノクんぐっ」
「…おいプロンプト」
「仏頂面は余計だろうが」
『…ノクング?』
「あ、えっへへーごめんごめん!この人は…えーと、ノクティーガー」
『えーと、イグニスさんにグラディオさんと…ノクティーガーさんですね』
「おお、俺もグラディオでいいぜ。敬語もいらねェ」
『…ありがとうございます』
途中、グラディオに口を塞がれるプロンプト。ブルーはなんだかよく分からないけどいい人達そうだなぁと思っているとイグニスがご飯を運んで来てくれる。お皿にはゴロゴロとお肉たっぷりのシチューが入っていた
「口に合うといいんだが」
『凄くいい匂いですね!ありがとうございます、いただきます。』
ブルーは一口、ぱくりと食べただけでふおお、と変な声を出す。こんな美味しいご飯はホグワーツでも食べたことが無かった、なんて美味しいんだろうと感動するとどんどん食べる手を進めていく
「…食べている所すまないんだが、ブルーさんと言ったか。貴方は何故あそこで倒れていたんだ?」
『あ、すみません美味しくてつい…!えと、私はホグワーツに居たんですけど気がついたらここに居て』
言ってからしまった、と考える、もしもこの人たちがマグルだったら…と。
ご飯が美味しくて忘れていたがここがもしマグルの世界ならブルーは魔法が使える事を秘密にしなければならないし、最悪彼等の記憶を消さなければならない。どうしたものかと考えているとイグニスが口を開いた
「…ホグワーツ、とは聞いた事が無い国なんだが…どのあたりか教えて貰っても構わないか?」
『えっと…あ、すみませんその前にここは何処の国ですか?』
「…ここは、リード地方にあるヴェナと言う標で、今はニフルハイム帝国が支配下にしている」
リード?ヴェナ?ニフルハイム?訳がわからない単語が沢山並びすぎて目が点になる。
ここは、ロンドンでもホグワーツでも無い、どう言うことか全く分からなかった
『あの、ロンドンは…ありませんか?』
「…ロンドン、とは…?」
恐る恐る聞いてみた言葉も、彼は知らなかった。ブルーは一体何処に来てしまったのか…と頭を抱えたくなる。
ほかほかだったご飯は、もう冷えて冷たくなってしまっていた
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