全て夢だったらと










身体がふわふわと浮遊感につつまれる。


目を開けると、ホグワーツの校長室にいた。
部屋にはブルーしからおらず…この浮遊感で、帰って来たんじゃなくて夢の中だという事はすぐに分かった

部屋を見渡して、側にある机に手を置くと少しだけ埃が手に付く。きっと長い事、この机は使われていないのだろう



『…父さん』

この部屋はあの人との思い出が詰まっていた
一年生の時、ダメだと言われたのに合言葉を盗み聞きして入った事がある。

合言葉は変わらないからそこから私はずっと入り浸るようにしていた。ダメと言っても入るブルーに観念したのか何度か入ってからは言われなくなった

いたずらを考えたり、ちょっと特殊な呪文を教えてもらったりして…2人で居られるその時間がとても好きだった










ぽた、と頬を伝って涙が流れる
もう一度会えるなら…何度そう願ったことか
ゴシゴシと目を擦るとヒリヒリとする。
夢の中なのに痛みを感じるんだなと…感傷に浸っているとキィ、と音がして振り向くと校長室のドアが静かに開いた

人の影が見えると黒っぽい服装に長い金髪を低く結い緑色の瞳をした自分と同い年くらいの男の子が立って此方を見ている



『貴方は…誰、ですか』



彼は質問に答えずにコツコツ、とブーツの音を響かせて此方に歩み寄って来る。
キィィン、と手元が光ると武器召喚を行っていた


『どう、して』


武器召喚は王家の人間か、その従事者でないと出来ないとイグニスから聞いたことがあった…彼はそのどちらかなのだろうか
歩く速度が速くなるとこちらに剣を向けて走ってくる
すかさずプロテゴを唱えて攻撃から身を守った


「何も覚えてないんだな」

『…え…?』

「名前も姿も、何も」

『どういう…』


意味、そう言おうとして言葉が遮られる
プロテゴを破られるとすかさず攻撃が飛んできて避けながら反撃の呪文を唱えた

呪文が相手の首を掠めると、髪ゴムが切れたのかサラサラと金髪がなびく
どこか、何処かで見たことがある光景だった。でもそれが思い出せない

一瞬の気の許しが油断を生んでしまい気がつくと彼は目の前まで迫って来ていた。首をガッ、と掴まれたかと思うと足が着かなくなる程持ち上げられる





『ぐっ…ぁっ…!』

「…ははっ、羨ましいよ…お前が」

『…っ、離し…て…』



「あいつらと一緒に、闇に飲み込まれてしまえばいい」


 
彼がそう告げると、周りに沢山のシガイが現れる
辺り一面が闇に飲み込まれその中に勢いよく落とされた


身体が闇の中を落下していき、もがく事もままならずそのまま意識を手放した















「…ブルー…ブルー…!」








『…ぅ……』



少しずつ意識が浮上して来ると声が聞こえる
プロンプトが此方を覗き込んでいた



「はぁ…良かった、目覚めた?」


『…ぷろ、ぷと』


「ブルー、大丈夫?凄い魘されてたけど…」



ゆっくりと上半身を起こそうとすると、また以前襲って来たような激しい頭痛が頭を襲う
我慢出来ず苦痛の表情を浮かべると痛みで呻き声が出てしまう


『痛…っ、ぁ…!!ぐっ…』

「ブルー!?、ど、どうしよう…どうしたら…!」

『…っ、だいっ…じょぶ』


プロンプトの服を掴んで平気だと手で訴える




頭の中で映像が流れ出す
前と似たような、ヴォルデモートが叫ぶ姿、誰かが呼ぶ声
夢に出てきた金髪の彼、そして、見たこともない何かの大きな瞳



入ってくる情報量に頭がついていかない
少しの間耐えると、痛みが引いて少しずつ治って行く
短く息を吐くとまたベッドにゆっくりと逆戻りした


『っ、はぁ…』

「ごめん、何も出来なくて」

『…そんなことないよ、ありがとう』




ゆっくりと周りをきょろきょろと見渡すとホテルの一室だと言うことに気付き、どこのホテルなんだろうと疑問を持つ


『ここって…』

「あ、えっと…急いでレスタルムに戻って来れたんだ。」


先程からなんとなくソワソワとしているプロンプト、どうしたんだろうと思い気になって聞くと言いづらそうに話し出した




「…あのさ、その…倒れた時の事覚えてる?」

『…洞窟で戦ってる時だよね?』

「うん。その後とかは…?」

『その後?何があったの』


「…実は、すぐに洞窟を出てレガリアに戻ろうとしたんだ。そしたら途中で蛇のモンスターに見つかっちゃってさ…ブルーを避難させて皆で戦ったんだけど全然勝てなくて…皆でどうしようって思ってたら、ブルーがモンスターの前に立っててさ」


『…わたし?』

「うん、覚えて…ない?」


うん、と短く伝えるとプロンプトがならいいんだ、と言った。その先が気になって教えてくれる?と答えると口を重そうに開く
その答えに目を見開き驚くことになる


「ブルーがいた世界では皆がそうなのかもしれないけど…いきなりブルーが蛇に向かって喋り出したんだ」


『…へ、び?』

「うん…なんて言ってたかは分からないけど、蛇が凄い怯え出してさ」



そのまま逃げて言ったんだ、と彼は言う
頭が真っ白になって理解がついていかない…蛇と話せるなんて、それはまるで…


「なんかあんまりいい予感がしなくてさ、言おうか迷ったんだ…」

『…そっか…教えてくれてありがとう』


言葉とは裏腹に気持ちは沈んで行く
でも、プロンプトに気を遣わせたくなくて顔に出さないように気をつけたつもりだった



「…あのさ、俺…なんかブルーの力になれないかなって」

『…え?』

「ここの所ずっと、ブルー寂しそうな顔してるなって思ってたんだけどさ…なんて言ったらいいか分からないしやっぱりその…寂しいとか、辛いとか色々あるんだろうなって」



知らない世界な訳だしさ、と彼は呟く
ブルーの手をきゅ、っと握るとしっかりと目を見つめた



「あんまり意味ないかもしれないけど、でも俺…なんでも力になるからさ。話とか全然聞くし、えと…言いずらかったらいいんだけど」



一生懸命に、でもちょっと照れながら話すプロンプトにふふ、と笑みが溢れる
え、俺変!?と焦っている姿も可愛くて見えてしまった

『変じゃないよ、ただ…嬉しいなって思っただけ』


よしよし、と彼の頭を撫でると俺の方がお兄さんなんだけどーとむくれる。


『イグニスにも、同じこと言われたの』

「…皆、言葉に出さないだけで凄い心配してるよ。ブルーの事」

『ありがとう、今度…ちゃんと話すね』

「うん、待ってるから」





プロンプトと少し距離が縮まったような気がして、それがなんだかむず痒くて…でも嬉しさが大きかった。
部屋の扉ノックされるとゆっくりと開いてイグニスが入って来る
上半身を起こして、イグニスと向き合った





「起きたか…具合はどうだ?」

『大丈夫、ごめんね迷惑かけて』

「気にしないでくれ、無事で良かった」


イグニスが今日の事なんだが、と話題を振るとプロンプトと一緒に聞く体制に入る



「先程、またノクトが頭痛を訴えていたんだ。ブルーはどうだ?」

『さっき痛くなったけど少ししたら平気になったよ』

「…やはりそうか」

「何か原因が分かったの?」

「ノクトの頭の中に流れた映像の中にカーテスの大皿あったんだ、それを探りに展望公園から見てみる事になった」

「なるほど…」

「もしかしたら、そのままカーテスの大皿に向かうかもしれない。だからブルーは無茶をせずここに残っていてくれ」

『…どうしても?』

「怪我をしたばかりだろう、無茶はさせられない」

『私も、この頭痛の原因が知りたい…足手纏いにはならないようにするから…付いて行かせて欲しい』

お願いしますとその場で頭をペコリと下げると…しかし、とイグニスが考え込む。プロンプトも一緒になって頭を下げてお願いします!と頼んでくれていた

「…足手纏いだなんて思ってはいない。ただ本当に何があるか分からないんだ、それでも一緒に行くか」

「大丈夫!ブルーの事は俺が守るから」

『プロンプト…』

へへっ、と笑ってくれるプロンプト
その笑顔を見ると、なんだか勇気をもらえた気分になる


『うん、行く。』

「…わかった、だがくれぐれも無茶はしないと約束してくれ」

『はいっ!』


ベッドを出てブーツを履くとよしっ、と立ち上がり気合を入れる。支度をしてロビーへ行くとグラディオとノクトが待っていた



「ブルー、もう大丈夫なのか?」

『うん、ご心配おかけしました』

「まだ寝てた方がいいんじゃ…」

『ありがとう、でも大丈夫』



そうか、無理すんなよ。とグラディオが肩を軽く小突いてきて軽くじゃれ合う


5人はホテルを出ると、カーテスの大皿を見る為展望公園へと歩いて行った









望遠鏡がある辺りに近づくと、赤髪をした少し背の高い男性が振り向く。すると此方に向かって手を挙げた


「あれ 偶然」

「またお前か」


また、と言うことは以前会ったのだろうか
彼の顔を見上げると、なんだかすごく寒気がして怖くなった。

体の奥から震えるような…憎しみに似た感情に襲われる
側にいるのに耐えられなくて、イグニスの後ろに隠れた


「どうした、ブルー」

『…なんでもない』



「あれ、その子 この間はいなかったよね」


出来れば関わりたくないと本能がそう告げている
上から下までじっ、と眺められるとふーん、と言葉を漏らしていた


「…君が例の子ね、」

『…え』


「ねぇ 昔話興味ある?」

男はノクト達の方へ振り替えると話題を変え話し出す。
巨人がさ、隕石の下で…と男が話し始めるのを話半分でブルーは聞いていた。

先程、あの男が呟いた一言が気になって仕方がない
もしやあの人は…何か自分の事を知っているのだろうか。

「どうする」

「うーん」

「行ってみて」

「ヤバけりゃ戻る」 

「ああ」

「それでいいか?ブルー」

『えっ、あ、うん』


話をあまり聞いていなかったブルーは突然の問いかけに勢いで返答してしまう
あの男はアーデンと言うらしく、どうやら一緒にカーテスの大皿まで行くことになったらしい


なんでもこの頭痛は巨人が話しかけてきているせいかも、と言う可能性があるらしくそれを確かめる為だそうだ


「よし、じゃあ君が運転で決まりだね」


ノクトが運転手に任命されると皆でレガリアに乗り込んで移動しようとする。
トントン、と肩を叩かれるとアーデンが側で立っていた


「君はこっちの車で行くってのはどう?」



『…遠慮しておきます』

「5人でずっとは窮屈でしょ?少しくらい良いんじゃない?」


にこっ、と微笑んで優しく問いかけてくる見えるアーデン
ブルーにはそれが、微笑みではなく冷たく笑っているようにしか見えなかった。不気味で怖くて…一瞬ヴォルデモートの影と重なると一瞬息が出来なくなる

これ以上うまく言葉が出なくて視線を逸らすと、目の前に誰かの背中が立ちはだかった



「ブルーは、レガリアで連れて行く」

『…ノ、クト』



「…ま、君がそう言うなら仕方ないか」


身を隠すように前に立ってくれているノクト
自身の車へと戻っていくアーデンを見てほっとして息を吐く
振り向いたノクトと目が合うと、頭をわしゃわしゃと撫でられた


『わっ、ちょっ』

「っくく、ぼさぼさ」

『ノクトがやったんでしょ』

「ま、ちゃんと守ってやるから安心してろ」

『…私も戦えるから大丈夫だよ』


「そういう意味じゃねーよ」



少し荒々しい手つきだったが、離れるのが名残惜しいと思ってしまう。行くか、と言われ頷くとレガリアを発進させアーデンの後を追った



















(正直関わり合いたくないな、あの男)
(私も側にいたくない)
(でも断ったらカーテスの大皿には入れないし)
(王子はどう思う、おっさんをよ)
(…ただの変な中年としか…)
(逆にただの中年おじさんであって欲しい)




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