打ち明ける事の難しさ

暫くしてホテルに戻ると、ちょうどフロントでプロンプトに出会う。話はもう終わったようだった。


『あれ、プロンプト…?』
「あっ、ブルーおかえり!イグニスが2部屋取ったからそれを伝えようと思って待ってたんだ」
『そっか、待たせてごめんね』
「いーえ。ブルーの部屋は202号室だってさ」
『ありがとうプロンプト』
「…ねぇ、ブルー」
『ん?』
「もしかして、泣いた?」
『ぇ、』

プロンプトが頬に手を伸ばして来ようとするが、半歩後ろに後ずさる。ほんの少し、ほんの少しだけ泣いたかもしれないけど顔には出ていないはず


『あ、さっきゴミ入っちゃって擦ったんだよね』
「…本当に?」
『ほんとほんと、心配しすぎだって!部屋、教えてくれてありがとうね。』
「あ、ちょっとブルー!」


へらへらと笑いながら半ば逃げる様にしてその場を後にする。部屋へと向かうと扉を閉め、ボフッっとベットに身を投げ出した


『…はぁぁぁ』


皆に弱みを見せたくない…見ないでほしい。
信頼していない訳じゃないけれど…でも心のどこかで、やはり一線を置いてしまう

それは元の世界でも同じだった。友達と呼べるものは居たけれど、どこか皆とは違う気がしていつも一人で行動していた。それでも気にせず関わりを持ってくれたのは…極一部の人だけだった。


いくら向こうの世界の無事を願っても、確かめられる術がなくて嫌な事ばかりが頭をかけめぐる。もそもそと掛け布団を引っ張って布団の中に包まるとゆっくりと瞳を閉じる。
今は何も考えたくなくて、考える事を放棄して夢の中へと落ちていった。













ブルーとロビーで別れた後、俺は皆がいる部屋へと戻った。
きっと…ブルーはなにか辛い思いをしてるんじゃないだろうか、そう思っていると顔に出ていたのだろうかグラディオが話しかけてくる
打ち明けるべきか悩んだけど仲間が辛いときは皆で解決した方がいい…そう思った俺は決心して相談することにした




「どうしたプロンプト、浮かねぇ顔して」
「…あのさ、ブルーの事なんだけど…」
「ブルーが、どうかしたのか?」
「さっきロビーで会ったんだけど…多分、どこかで泣いてたみたいで」
「ブルーが…?」
「うん…。」
「王子はなんか聞いてねーのか?この間一緒に寝てただろ」
「…お前が言うと如何わしく聞こえるからやめろ。特に何も話してねーけど」
「…俺達に言えない事を、1人で抱え込んでしまっているのかもな」
「なんか、力になれないかなって」
「だが本人の口から聞かないと何とも言えねーよなぁ」
「ブルーって、あんまり自分の話しないからさ…なにかきっかけがあればいいんだけど…」
「・・・明日、ブルーの服を見に行く予定なんだ。今着ている服だけでは事足りないだろうからな。その時に何か抱え込んでいないか少し探ってみようと思う」
「そうだな、全員よりかは誰が1人になら話すかもしれないだろ」
「だといいが…大人びて見えるがまだ彼女は17だ。慣れない世界なら尚更不安が多い筈だ」
「うん…そうだね」
「明日、ノクト達は王の墓所の情報を探ってきてほしい。タルコットから聞いた洞窟も少しでも情報があれば対策が出来るだろう」
「そーだな」





そろそろ飯食いに行くかとグラディオが提案をすると立ち上がって部屋を出ようとする。
ノクトはブルーを呼んでくる、と隣の部屋へ行こうとするので俺もついていく。ドアの前に立ちコンコン、とノックをして待つが返事は返ってこなかった


「おーいブルー」
「…いないのかな?」
「入るぞ」


ドアを開けて部屋の中を確認すると、ベッドの上がこんもりと盛り上がっている。
近づくと布団をかけたブルーが布団を鼻先までかけて丸くなって眠っていた。何度か声をかけたり軽く揺するが起きる気配はない


「おい、ブルー」
「…起きなさそう?」
「あー、多分」
「どうしようか」
「無理に起こすのもアレだしな」
「イグニスに相談してこようか?」
「ん、あぁ頼む」


部屋を出てイグニスとグラディオの元に戻るとイリス達もいた。一緒にご飯を食べに行くらしい
2人に相談すると、イグニスがブルーが起きたら何か軽食を作ると言うことで寝かせておく事になった

早歩きで部屋に戻りドアに手をかけようとすると少しだけ隙間が開いている事に気付く。ノクトに声をかけようとしたが彼は部屋の中でベッドに腰掛け、ブルーの頭を優しく撫でていた。その姿を見て声を掛けて良いのか分からず喉元で声が詰まって出てこなくなる。ノクトの穏やかな表情はあまり見ない…ルナフレーナ様に向ける物とも少し違う気がする
もしかして…、なんて考えは口には出さず飲み込むと少しドアを開けてノクトに話しかけた


「ノクト、ブルーには後でイグニスが軽食作ってくれるって」
「分かった、今行く」


ノクトが立ち上がってこちらに向かって来る
見ていた出来事が無かったかのように、俺は平然とノクトと一緒に皆の元へと向かった













「ブルー……ブルー…」


ゆさゆさと肩を揺すられる。
まだ寝ていたいのに一体誰なんだ、とゆるゆると瞳を開けるとイグニスがベッドに腰掛けて私を呼んでいた


『…イグ……ニス…』
「随分眠ったな。ブルー」
『…ん…』
「もう朝の8時だ、起きて服を見に行こう」
『…はち…?』
「ああ、8時だ」
『…8時!?』


ガバっ、と勢いよく布団から起き上がる
昨日眠ったのが18時くらいで今が朝の8時!?どう考えても寝過ぎたしシャワーも浴びていない。一気に思考が動き出して頭の中がクリアになる

『うわ…ごめんずっと寝ちゃった…』
「疲れていたんだろう、気にしないでくれ」
『急いで支度するから待っててくれる?』
「急がなくて大丈夫だ。部屋で待っているから終わったら来てくれ」
『はーい』

バタン、とイグニスが立ち上がって部屋から出て行く
部屋に備え付けられているシャワーを済ませ、ヨレヨレになった服を魔法で綺麗に洗って乾燥までして整えると着替えを済ませた。

ふ、とテーブルの上を見ると卵が乗ったトーストが置かれている。側には朝飯に食べてくれ、とメモ書きがあった。一口ぱくり、と齧り付くと暖かくて出来たてほかほかの優しい味が口に広がる

朝ごはんまで用意してくれてるなんて紳士すぎて驚きた
大口で食べ終えるとごちそーさまでした、と小さく呟く。髪の毛を乾かす時間が無かったのでくるくると髪の毛をお団子にしてそこに杖を刺して固定した。いわゆる自然乾燥だ

部屋を出て隣の部屋の側に行くと扉を数回ノックしてから中を覗き込んだ


『イグニスお待たせ!』
「早かったな、朝食は食べれたか?」
『大丈夫、ありがとう用意してくれて』
「簡単な物しか作れなかったが、喜んで貰えて良かった」
『イグニスが作る料理は皆美味しいよ』
「ありがとう」
『よし、じゃあ今日はお願いします』




2人で一緒にホテルを出ると服屋へと向かう。
イグニスが大体何処にあるか把握してくれていた為迷わずに見ることが出来た

出来れば動きやすい服が欲しかった為、比較的カジュアルな物を探して何軒か回る



『うーん、こんな感じかなぁ』
「ほかに必要な物は大丈夫か?」
『大丈夫、殆ど欲しいもの買って貰っちゃったし』
「いい物が見つかって良かったな」
『イグニスと来て良かったよ、色々見立てて貰えて』
「それは何よりだ」


午前中を使ってお店を回り切ると欲しいものは大体揃えられていた。
途中お金を渡すからと言って下着類も買わせて頂いてしまった…流石に選ぶ時は1人だけれど。


お昼にしよう、とテラスのあるお店の席に着く
2人で同じ物を頼むと冷たい水が入ったグラスを先に持ってきて貰い喉を潤す。沢山買い物をしてカラカラだった為、一気に飲み干してしまった


「この世界には少し慣れたか?」
『うーん、そうだね。まぁあんまりあっちと変わらないけどモンスターがそこらに居るのとか、討伐の仕方とかは慣れたかなぁ』
「ブルーがいた世界は、平和だったのか?」
『平和…うーん。完全に平和って訳じゃないけど、平和な時もあれば戦う時もあるかなぁ』
「…戦いは、得意な方だったのか?」
『んーどうだろ…まぁ、それなりにかな?』


学校にいる時は殆ど戦うなんて実践してこなかった。私は色々な人から教えて貰っていたけれど…。
グラスに残った氷をボリボリと咀嚼する。マナー的には失礼かもしれないけどこの食感が好きだった


「何か…1人で抱え込んではいないか?」
『…え』
「言いづらくて言えない点もあるとは思うが、もし何か困っている事があるなら…」
『あはは!ないよ、ないない。私は大丈夫だから』


笑顔で問いに答え会話を終わらせようとするがブルー、と呼ばれて目を合わせられる
氷を食べるのを止め見つめ返すといつになく真剣なイグニスがそこにいた


「見知らぬ異界の地で辛いと言う気持ちもあるだろう、でも俺達はブルーの事を仲間だと思っている。だからもし、ブルーが困っている事があれば力になりたいんだ」
『…ありがとう、イグニス』


仲間、そう思って貰えるだけで嬉しかった。
でもなんて返したらいいのか分からなくてお礼を言うしか出来ない。優しさはすごく嬉しいけど、それでも私の思いを打ち明ける事は出来なかった
ふ、と大好きだった父を思い出す


『…例えばの話なんだけど、』
「なんだ?」
『もしもイグニスが、大切な人を助ける為に、自分が犠牲にならないといけないって状況になったら…どうする?』
「…そうだな、」


うーん、と真剣に考えて悩むイグニス。
きっと頭の中に浮かんでいるのはノクトだろう。彼が出す答えはなんとなく分かっていた


『イグニスの事だから、きっとその人の為なら自分の身を捨てても守るんだろうな』
「…どうしてそう思うんだ?」
『うーん、イグニスが紳士だから?』
「それは答えになってないんじゃないか?」
『そう?』


ふふ、とお互い冗談混じりに話合う
そばでいい匂いがする…きっともうすぐだ


『でも…イグニスは、犠牲になんかなっちゃダメだよ』
「…どうしてそう思うんだ?」
『…イグニスが自身を犠牲にして、その人が代わりに生き残ったって知ったら悲しみでどうにかなっちゃいそうだから…かな』
「…それは、」
『あ、ご飯きたよ!』





目の前をゆらゆらと湯気を出しながら食事が運ばれてくる
ペコペコだったお腹を満たす為、早々と食事にありついた
どうして私があんな事を聞いたのか…きっと彼は気になっていたが私は見て見ぬふりをしてご飯を食べ続けた

















(イグニス、今頃ブルーに聞けてるかなぁ)
(さーな…でもあの軍師様の事だ、なんか掴めてはいるだろ)
(ノクトはイリスとデートだし)
(俺たちは野郎2人で楽しむか)
(…なんかグラディオおっさんみたい)
(だぁれがおっさんだ!)









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