敵わない相手




「エメラルド、入っていいか」

もう9時だと言うのに中々起きてこないエメラルドを迎えにイグニスはホテルの隣の部屋へと向かった
何度かドアをノックしても返事が返って来ることはなく、部屋の中は静まりかえっている

「…入るぞ、」

ガチャ、とドアを開けベッドに視線を落とすと…まだ布団の中で丸まっていた
カーテンを開けて日の光を部屋の中にいれると、ゆさゆさとエメラルドの肩を揺すった

「エメラルド、もう出発の時間だぞ早く起きて…エメラルド…?」

やけに頬が赤く呼吸が荒い気がする
エメラルドの額に手を当てると普段より何倍も熱かった

『ん…だ、れ…』

「俺だ、エメラルド。」

『…イグニス…?』

「ああ」

『いま、なんじ…』

「9時だ…でも今日は寝ていろ、熱が出ている。すぐ戻ってくるから少し待っていてくれないか」

『…ん』

急いでノクト達に知らせて…今日は街で情報収集と数人で出来る討伐に切り替えようと足早に部屋を出た




皆に伝えた後、また部屋に戻り看病をしようと部屋に入る
何か食べれる物を、と思い先程作ったお粥を運んだ
プロンプトは看病したそうだったが下手に移っても困ると思い2人と一緒に外に出てもらった
まるっ、と効果音がつく様にベットでぐったりと丸まって寝込んでいる彼女に近寄ると、瞼がぴくっと反応しゆるゆると瞳を持ち上げる



『…イ、グニス』

「すまない、起こしたか」

『んーん…』

「何か食べられそうか?」

『…あんまり食欲ない、かも…』

「お粥を作ったんだ、少しでいいから食べて薬を飲もう」

『ありがとう…』


身体を起こすのも辛そうで背中を支えて起き上がるを手伝うと、もたれ掛かれるように背中と壁の間にクッションを入れる
側にお粥が載ってるお盆を持ってきて、エメラルドの口元までスプーンでお粥を運んだ

「冷ましたから熱くないはずだ」

『…ん、』

いわゆるあーん、と言うやつだ
きっとしんどいのだろう。普段なら恥ずかしがるエメラルドも今日は特に何も言っては来なかった

『ごめ、もうお腹いっぱい…』

「気にするな、少しでも食べられれば十分さ…後は薬だな」

『…』

「こら、布団に潜ろうとするな」

『…あれ不味い』

「良薬は口に苦し、と言うだろう」

『…不味い』

「駄目だ」

『…』

「怒るぞ」

『…って言って私に怒ったことないくせに…』

「今日は本気だ」

『…わ、分かった…飲むから…』


エメラルドが渋々了承すると、俺は持っていた緑色の粉末の入った容器を水と共に差し出した
ぐいっと水と共に一気に飲み込むと、暫く顔を顰めていた

『…う、まずい…』

「ちゃんと飲んで偉かったな」

『…もっと褒めてママ』

「こんな娘を持った覚えはない」

『へへっ』

グラスを受け取り台に置くと、エメラルドを再度布団に寝かし直す
空元気で喋っているのか、言葉とは裏腹に瞳はとろんとして今にも寝てしまいそうだった
布団を肩までかけ直してやると、じーっとこちらをみているエメラルドと目があった

『…ありがとー』

「ああ、ゆっくり休んでくれ」

『…あ、れ…部屋戻らないの…?』

「…側に居てくれ」

『…え?』

「そんな顔をしてるやつを放っては行かないさ」

『…はは、敵わないなぁ…』

「おやすみ。」

『…ん』


ベッドの端に座ると、身体を此方に向けて横になっているエメラルドの背中をリズム良く叩く
無理をしていたのか、すぐにすーすーと寝息が聞こえて来た
苦しいのか、表情は少し辛そうで空いてる方の手でそっとエメラルドの頭を優しく撫でる
次に起きた時には、少しでも良くなっている事を願って。







END

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