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私はいま、轟邸の大きな門を目の前にしている。

気分は最悪だ。


しかし長年培ったポーカーフェイスは大きな門に興味津々な少女のキラキラした顔を作っている。




「ぱぱ!えんでばーのおうちおおきいー!!!」

「そうだろ?パパは緊張で吐きそうだ!」




真っ青な顔でそう言う父を今すぐ同感だと説得して逃げ出したい。

お前エンデヴァー怖いのになんで相棒やってんだよ。


インターホンを鳴らして聞こえた声は女の人の声。
こんなでかい家ならお手伝いさんとかかなと思ったら父が"冷さん"と呼んだ。

おいおい轟母じゃないか。




「いらっしゃいミョウジさん。主人もすぐ来ますので居間の方にどうぞ」




白髪が綺麗になびく美人は、原作で見たよりも元気そうで、その右手には小さな少年の左手。

髪が半分に紅白で分かれるめでたい色をしたその少年はどう見ても轟少年。

おいおいおいおいおいおい。同い年フラグじゃねぇか!!!



「え、え、冷さんその子!」

「ええ、四人目の焦凍よ。ナマエちゃんと同い年」

「えええ!!そんな大変な時期に育休…えええ!すみませんでした!!」

「良いのよ、四人目にもなると出産も慣れたわ」



上品にうるさい父の対応をする轟母。

彼女に"おお…"と喝采をしながら、彼女の足から離れない少年に目を向けた。

人見知りなのか、こっちを気にするものの一切話しかけて来ない。というかソレ轟母歩きづらくないか。



「…しょーとくん?ナマエね、ナマエっていうの!よろしくねー」

「………………ん」



手を伸ばせばだいぶ間を開けたものの握手をしてくれた。
私は笑顔でその手を一切話さずそのまま隣を歩いた。

"えっ、えっ"

と戸惑う轟少年だが気にしない。

戸惑うショタ…いいじゃないか



「あら、ナマエちゃん人見知りしないのね」

「そうみたいですね!まだお友達いないですし、興味があるんですかね?」

「しょーとくんこせいでた?」

「……………ま、まだ…」

「わたしもー!」



父と轟母の表情が固まるのが見えた。

どうやら父は個性婚のことを知っているようだ。
轟少年の個性発現はまだ。ということはあの虐待もどきの個性訓練はまだだということだろう。

それでも轟母が心の病になるほどだ。夫婦仲はもう既に悪いだろう。




居間についた私たちはソファに座り、出されたジュースを頂いていた。

轟父はその五分後に来て、居間に入るなり私を睨み付けた。

私は睨み返さない為にも、精一杯の笑顔で迎えた。




「えんでばーだぁぁ!!かっこいい!!ひーろーすーつきてない!!すごいすごい!ほんものだー!!」



恐らくこいつが苦手であろううるさいガキを演じた。

彼の回りをピョンピョン飛び回り、興奮した様子を見せた。

燃やされないか不安で不安で仕方がないが、いざとなれば氷の個性を持つ轟母が何とかしてくれると信じてリスキーな行動を起こしている。



「うるさい」

「びゃっ」



このやろう頭掴みやがった!!!

やばいやばい燃やされる

しぬううううう




「わああああああああエンデヴァーさんすみませんっっっつ!!」

「うるさいのはお前譲りらしいな」

「ぎゃぁあああああああああすみません!!!」





あ、これ大丈夫だ。
これ父でうるさいの慣れてる感じだ。

一気に安心した私は轟父に頭を抑えられたためおとなしくする。

轟父は私の顔を覗き込んで個性は発現したか聞いてきた。

当然まだだと答えると、発現したらまた顔を見せるように言われた。




「あ、どこへ…」

「トレーニングだ。電話ははいっていないか」

「ええ、今日は何処からも…」

「焦凍の面倒はちゃんとみろ。いいな」

「…はい」




うっわー…これは私秒で家出するわぁ……

轟母だんだんと元気なくなっちゃったよ。

まじかよ空気わっるぅ………


ああん…昨日のオールマイトもう一回見たいよぉ。



居間を去る轟父をじっと見つめていると、後ろから服を引かれた。

なんだなんだと振り替えると轟少年がいる。




「しょーとくん?」

「ひーろー、すきなの?」

「うん!おーるまいとすき!」




轟父がいないことを良いことに、本心を曝け出す。
そういえば轟少年もオールマイトファンだったな。

これは話が合いそうだ。そう思い共にオールマイトの動画を見ることになった。








「ぼく、ひーろーになりたい!」

「お?おー!がんばれー!」




ハッキリとそう言える轟少年が輝いて見えて、
まもなく言うのをはばかるようになることを思い出したら、胸がいたんだ。




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