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私はオールマイトが大好きである。

スマホで「お」と打つと予測変換の一番前に「オールマイト」が来ることは朝飯前。

あと数ヵ月もすればデクのようなオタク部屋が完成していたはずだ。



そして私のヒロアカ知識はオバホをデクが倒すところで止まっている。

私はまだアニメしか見ていないのだ。



本誌派の人間は轟父について"だんだんかわいくなってきた"と言う人が多かった。

しかしそこまで私の記憶は達していない。
初期の"嫌な親代表"で留まっている。

そしてあやつは友好的な態度をとるオールマイトを睨みやがった。
あの瞬間私は好感度が少しでも上がることはあってもコイツを好きになることはないと確信した。

あと単純に女の敵だあんなの。



最近まともにしゃべれるようになってきた私の口からはオールマイトの名前ばかり。

親は時折"やべぇどうしよう"という顔をするようになった。


そうして私は少年サンデーの某見た目は子供頭脳は大人な少年探偵並みに頭を回転させてみた。


両親がエンデヴァーファンならばエンデヴァーの特集などを見逃さない、つまり私の生活環境にもっとエンデヴァーがいてもおかしくはないのだ。

しかしそういうわけでもない辺り、両親はファンではない。
だがこうしてエンデヴァーを勧めてくるということは、私が多少なりとも彼に興味がないと困る状況なのだ。

そんなのエンデヴァーが知り合いで、割りと頻繁に会う仲である可能性しか思い付かん。

さらに言うと父は恐らくヒーロー活動に携わっている。
ヒーロースーツが部屋にあった。

しかし私が生まれてから彼が私から離れた所を見たことがない。

母はすぐ近くのカフェでパートとして働いているらしく、よく見送っている。




ここまでの状況証拠を揃えて私は想像力を働かせた。


父はエンデヴァーの相棒サイドキックで、現在は育休。
だがそろそろ育休が終了し仕事場に顔を出さねばならない。

その際、生れた愛娘の姿を彼に見せる義務が生まれる。

何てったって3年も育休を与えられたのだ。普通はあり得ない。
無理を承知で頼み込み、粘着質な父に押し負けたのだろう。


そしてオールマイト大好きな娘と共に出勤し、オールマイトへのライバル心が高杉な彼の前でオールマイトを褒めてみろ。燃やされる。


ということで最近になって彼らは私にエンデヴァーを勧めるのだろう。


ここは彼らの顔を立てるため、一肌脱ぐしかあるまい。




「えんでばーは、んー…と、つよくて、かっこいいよ!えんでばーのおよめさんもいいなぁ」




嘘である。絶対なりたくない。





「そ、そうだよねー!!」

「実はパパ、エンデヴァーとお仕事してるんだぞー!すごいだろー!」

「えええええ!!!パパすごぉーい!ナマエもえんでばーあいたーーい!!」




嘘である。燃やされそう。


しかしあからさまにホッとする両親に本心など言えるはずもない。

え、て言うか私どの年代なの。

まさか轟少年と同い年とか言わないよね???

え、これもしお宅訪問なんて流れになったら轟少年エンカウント??

嘘でしょ虐待もどき見たくない。




「今度パパとエンデヴァーのお家行こうか!」

「…………わぁい。えんでばーのおうちー。」










余計なことすんな父ぃぃぃぃぃい!!!




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