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「しょーとくん!わたしこせいでたよ!」

「えっ!」


個性が発現したから父に連れられ再び轟邸に来た。

しかし轟父と父は急遽入った事件に出動し、私は轟邸に置いてかれてしまった。
轟少年以外の子供とはまだ面識がないし、同い年の子供を放って轟母とおしゃべりというのも変だ。

ということで、轟少年と遊んでいる。

轟邸は色んなものが揃っていて飽きない。
そもそも家に道場があるのおかしい。頭おかしい。

竹刀でパコパコと情けない音を鳴らし合いながら二人で剣道もどきをしている。



「どんなこせい?」

「んとね、けがなおせるの。」

「じゃあ、おいしゃさんになるの?」

「ううん!ヒーローになるよ!」




オールマイト、八木さんとあれから話し合い、私はやはりヒーローになることに決めた。

まず課題は、相手に与えるダメージを調整できるか否か。

それをしないと、せっかく貯めたダメージを一発にしか込められない上、ダメージ量によっては相手を殺してしまうから。


子供の私でも的確に分かるように指摘してくれる。
八木さん先生としてはダメだなぁって皆に言われてたけど、結構教えるの上手くないか??



「じゃあ、らいばる?」

「え?なかまでしょ?」

「え、でもお父さんが…」

「あ」




そうだったよ。あの人同業者は皆敵ィ!!って人だわ。
轟少年もそうなっちゃうのやだなぁ。

ここは精神的にお姉さんな私が教えてあげよう。




「ひーろーはぜったいかつの。だからめっちゃつよいヴィランがでたら、きょうりょくするんだよ!だからなかま!」

「あ、そっかぁ…じゃあひーろーになってもナマエちゃんはともだち?」




んぐぅっっっっ!!!

なんてこった!!!そんな上目遣いで聞かれたらYES以外の答え見つからないよ!!

YES以外答える気ないけどな!!!




「もちろんだよ!!しょーとくんとらいばるとかやだもん。つよそう」

「そ、そうかなぁ……おかあさんはこうやってこおりが…」







「「びゃああああああああああああああ!!!」」





床が凍った。




轟母の真似をして右手をかざした床に氷が広がった。
小規模ながら、アニメで見る光景そのもの。

ということは、炎も出るんだろうか




「……えんでばーはひをだすよね?」

「え、でも、おにいちゃんもおねえちゃんも…ひとこおりどっちかだし……」




半信半疑で左手を見つめたら、炎が出てきた。
ライターぐらいの火だけど。




「「わぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」」

「どうしたの二人とも!」




慌てて道場に駆けつけた轟母は私達を見て驚き、

轟少年の姿を見て、深く、深く傷ついた顔をした。



右手で床を凍らせ、左手でライターほどの炎を出す。
自分の夫が何度も欲した姿が、現実に起こってしまったからだ。


「しょ、と……」

「おかあさん!ぼく、こせいが」

「焦凍!!今すぐ個性をとめ…いや、止め方が分からないわよね、どうしましょう……どうしよう…!」




轟母が戸惑っている。
たぶん、酷く混乱しているんだ。

轟少年が夢見たヒーローへの第一歩。
ましてや現ヒーローが強くなると確信して望み続けた個性のあり方。
轟少年の未来が開けた瞬間だ。

それと同時に、轟父にこの事がバレれば、轟少年は過酷な訓練が待っている。

混乱している母を目の前に、轟少年もどうしたらいいかと固まっている。


どうなるんだ。原作だとどうなっていたんだ。

私が首を突っ込んでいいのか。



いや、でも、




轟少年の手が、凍え始めてる。





ぱちんっ!

「!」

「っ!」





轟少年の目の前で、大きく手と手を叩いた。

意識を何かにそらせば、炎は消えるかもしれないと思ったからだ。

案の定炎は消え、轟少年は凍える手を際ほどまで炎で温まった左手で包む。




「れいさん!しょーとくんさむいって!」

「あっ!ええ、そうよね!今ストーブを用意するわ!!」





轟母も冷静になったのか、ストーブを運びに道場を出た。

少しでも凍傷になるのを防ぐために、私も轟少年の右手を包む。
不快かな、と思いつつも、小さい頃にパーソナルスペースを意識することなんてほとんどなかった思い出を思いだし、包んだ右手にハァと暖かい息を送る。

ふと、轟少年の両手が震えていることに気がついた。


「………しょーとくん?どうしたの?」



泣いていた。

不安そうにうつむいて、涙を浮かべていた。




「………おかあさん、こまってた。」

「…………」

「ぼく、こせいでちゃだめだったのかな…」









「そんなことないよ」





ぽろっと


考えるより先に言葉が出てた。


先日、私の不安を取り払ってくれた八木さんみたいに、

私も、何か言わなきゃと思った。





「れいさんは、しょーとくんがヒーローになるっていったとき、なんていった?」

「……なれるって。なりたいものになっていいっていってた」

「だよね。れいさんは、いつもしょーとくんをおうえんしてたよ」

「……うん」





「しょーとくんがこせい出たのは、ゆめのいっぽ!

だかられいさんが、おうえんしないわけない!!

さっきのはしょーとくんがけがしちゃうから、あわてちゃったとか……そんなかんじだ!!ぜったい!!」







八木さん、語彙力のない人間には、人を慰める能力すらないのでしょうか………教えて八木さん。

なんだか一層落ち込んだようにうつむく轟少年に私は不安になってきた。

早く轟母戻ってこーいとキョロキョロすると、轟少年は少し顔をあげて、視線だけを私に向けた。


そう。上目遣いである。



「…………ぜったい?」



これはもう誘拐したいレベルだ。

私君のためなら犯罪犯すよ。


"恐れ知らずの笑顔"

人々がそう称える大好きなあの笑顔を真似て思いっきり笑う。





「ぜったい!!」





轟少年もつられて笑ったから、結果オーライってことで!




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