にねんかん | ナノ


▼ わらわは好きじゃ

「はんっハンコック!!!おおおお下ろして!!!」

「それは聞けぬ!下ろしたら逃げるだろうお主!」

「王下七武海を前に逃げようなんて考えませんよ!!!無理でしょう!!」



ルスカイナ島へと進む船の上、私は未だにハンコックの肩に担がれていた。

いい加減腹にねじ込まれているハンコックの肩めっちゃ痛いし、
船酔いしそう。


私の説得に納得したハンコックは私から手を離して、やっと地面に足をつけることができた。


そしてなんの迷いなく海へと駆け出した。




「海へ逃げる気か!!!」

「姉様に嘘をついたな!」

「待て!!」




私と渡り合える強さを持つ三姉妹は全員悪魔の実の能力者。

海に逃げてしまえば追うことは不可能に近い!



ごめんハンコック。

でも!!!まじで!!!いま!!!



ルフィ君に会いたくない!!!!!!






「前を向くのではなかったのか!!!」


「!!」





船の端に手を掛けた所で、後ろから聞こえたハンコックの言葉に、動きが止まる。

動けない。

ハンコックの石化能力はかけられていないのに。

コツコツとハンコックの特徴的なピンヒールの足音が近づいてくる。



「前を向かねば、エースに怒られると言っておったのはお主じゃ。」

「………」

「エースと白ひげの意思を継ぐと言ったのは!!!ルカ!!お前自身じゃ!!」

「……っ」



「お前は、中途半端な奴じゃな」







そうだ。わたしは、


中途半端で情けない臆病者。


白ひげ海賊団に肩を並べるほど強くはなくて、

他の海賊団に負けるほど、決して弱くはない。


エースが大好きで大好きで、

でも伝える勇気はなくて。



エースが私を妹のように接することに嬉しく思うし、

物足りなさもあって。



前を向かなきゃエースに怒られることも、親父さんに笑われることも分かってるけど、


二人の死を受け入れられない自分もいて、


結局エースを思い出させるルフィ君から逃げてしまう。





「………そうだね。私は中途半端だよ。まだ、ここに来るべきではなかった。」

「そうじゃな。」

「な、なので…私は一度女ヶ島をはなれ……」

「だが、そこがわらわは好きじゃ。」





後ろから伸びた白くスラリとした手が、私の手を包む。

驚いて後ろを見ると、ハンコックは見たこともない優しい笑顔を私に向けていて、

私は彼女の放った言葉を理解ができなかった。




「………すき?」





どこが良いんだ。こんなの。

たくさんの人に迷惑をかけて、心配させて、

ぐちゃぐちゃでどうしようもない。


こんな情けない私の中途半端なところが、すき?





「ああ。

お主は決して強くはない。だから今こうして、わらわ達に多大な迷惑をかけておる。」


「ぅ……」


「だが弱くもないから、ここに来て、エースの話をわらわにして見せた。

どうせ、エースと白ひげの墓の前で泣きわめいておったら仲間が心配するとかですぐに行動に移したんじゃろう?」




ドンピシャだ。

返す言葉もない……。




「わらわはそんな主の不器用さが愛しくてたまらぬ。

不器用に足掻いて、不器用な優しさで己を傷つけるお主が、愛らしく思う。」


「…はんこっく」


「一つアドバイスをしてやろう。人生の先輩たるわらわのありがたい助言じゃ。よく聞け。」





顔の前で人差し指を立てたハンコックは、その指で私の額を小突いた。





「友達には、胸の内を打ち明けてみるものだ」


「…!!」





笑うハンコックは、いつもとは違う美しさを放っていて、まるで神様のようで、

私は気づいたら、彼女の腰にすがり付いていた。





「ぁ、ああぁあ!!ああああぁ!!!!」




雄叫びをあげて、彼女の腹部を涙で濡らしていた。

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