「引け、テメェら。」



"お前、どんなときに泣く?"





"私より強い奴に、屈したとき…かしら"






"じゃあ俺がお前を泣かしてやる"



"絶対ェ勝つ!!そんで泣かす!!"










「その女、泣かすのは俺だ。」









どうして、諦めないんだ。ばか。

どうして、私を捨てないんだ。ばか。




どうして、






「……………っ、さんじぃ……」






助けを求めてるんだ。私のばか。







「情けねぇ声あげんじゃねぇよ。生意気女。」

「っ…ふ……うっ…」



「てめぇ!何者だ!!」

「さては、海賊か?」



目の前の男二人は、サンジが私といた海賊であることを知り、ただの人間だということ察するとニヤリと口角をあげた。

まずい。

コイツらサンジを殺す気だ。



私はこの島で最弱。

その私にすら敵わないサンジは、





格好の餌食。








「…っサンジ逃げて!」

「もう遅ぇ!!!」




男の1人がサンジに飛びかかり、拳を繰り出した。




嫌だ。

嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

サンジ死なないで。


私の、私の宝物が!




「さ…」

「邪魔って」



拳がサンジに届く瞬間。






「言ってんだろうがぁぁぁぁあああ!!!!」




殴りかかった男は目にも止まらぬ速さで飛ばされ、
私の手錠がかかった壁に男がぶつかって、衝撃で打ち砕かれた。

手錠は両手首にぶら下がったまま。

私たちの種族でも壊せないような素材のそれは傷ひとつついていないけれど、

格段に自由へと近づいた。





どうして、サンジがあの男に勝ったの?








「……………なにしてんだ。お前。」







もう1人いる男なんて、まるで見えていないかのように私に近づき声をかける。

その瞳は呆れを含んでいるけれど、決して冷たくはない。





「俺より弱ェ奴に!!俺より強ェお前が負けんじゃねぇ!!!」

「……ぇ…」





サンジより、弱い…?






今まで私の肌を裂き、内蔵を傷付け、痛め付けてきた、

この男たちが…?





どうして?







「立て馬鹿野郎!!お前は強ェ!この俺よりも!



この島の誰よりも!」








私は、この島で最弱だと


思っていただけなの?







「…調子乗んな!クソ人間ん!!」






サンジの背後にもう1人の男が立ち、組んだ両手を振り上げた。




ああ、コイツら



こんなに弱かったんだ。






「ぐっ…あ………」






うつ伏せになり両手で地面を押した反動で、伸ばした両足が男の腹に刺さる。

こんなに簡単に倒せるなんて、思っても見なかった。


私はずっと強かったんだ。


この島の人達と渡り合えるほど、強かった。


だけど虐げられた記憶、訳のわからない風習の強制力、身体に刻まれた痛み、全部が私よりも強いものとして刷り込まれていた。


本当は、こんなにも簡単なことだったのに………





"アイ、お前もサンジと行け"

"え、でも……"

"アイツらなら、もし故郷に戻っても大丈夫だろう"

"………え…?"







ゼフさんの言う通りだ………







「サンジ。」

「あ?」

「ぶっ潰すぞ。この島。」









私は強い。


天小人あまこびとだから。


ゼフさんといたから。


麦わらの用心棒だから。





サンジがいるから。

私は強い。





「はっ、その顔がお似合いだ。生意気女。」




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