「っー!!ちくしょう…何が起きやがった……はっ!!そうだロビンちゃんが!!!」




鬱蒼と生い茂る草木を掻き分けながら、気絶する前のことを思い出す。

そうだ。空島を出て一番最初に着いた島で、金塊を金に変えられるかとか、各々の好きなものを調達しに行くとかで、

体調が悪ぃとか言って船から降りねぇアイ以外の全員で島を降りて1日堪能していた。

記録ログは2日で溜まるらしく、特に留まる理由もないため明日発つとナミさんが言っていた。

この島はそんなに豊かじゃねぇらしい。
本屋も小さいとロビンちゃんとチョッパーが嘆いていたし、

金塊を換金するほどの財力もないと来た。

ナミさんは半ばやけになって船に戻ってきていた。



次の日、また町に出ようとした俺たちだが、
今日も船に残るといったアイがルフィ、チョッパー、ロビンちゃんを話があると呼び止めた。

ルフィはどうせ単独行動。
ロビンちゃんとチョッパーはまた二人で本屋に行くらしいから、

俺たちは先に行くことになって船に背を向けたとき、

三人の悲鳴と嵐でしか聞いたことのない波の怒号が響き、メリー号を見た。



ひっくり返りそうなほど傾けられた船体から、能力者三人が海へと落ちる姿と、

船体を力付くで傾けている幼馴染の姿。



次の瞬間には腹に衝撃が走り、痛いほどの風を感じながら気を失ったんだ。






「………っあいつ!!どうしちまったんだ!!」



思えばこの島に着いたときの様子がおかしかった。

唯一可愛いげがあるとも言える海を見つめる顔が、何故か強張っていた。




「…あの、どうかされました?旅の方…」




少し年季のあるものの、透き通る美しい声で声をかけてきたのは、荒々しい俺の様子を心配したマダム。

出会うのが10年早ければ俺の心臓は彼女の放った美しさという矢に射られていたことだろう。




「あら、大変…泥だらけじゃない」

「ああいや、せっかくの綺麗なハンカチが汚れますよ」

「いいのよ、こういう時の為のハンカチでしょう?」



ふふ、と微笑む彼女に、どこか既視感を覚えた。

クレア、というこれまたどこかで聞き覚えのある名前を名乗るマダムは、俺が海賊だと言っても怯えず、

そしてアイの名前を出した。




「もしかして……アイちゃんのとこの海賊さん…?」

「え、アイを知って………」


「やっぱり!!!お願い!!あの子を助けて!!」






悲痛に叫ぶマダム・クレアの様子に、合点がいった。











ここは、あいつの故郷だ。

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