「やっほー、アイちゃん。反省したぁ?」

「10年以上も何処にいたんだか…死んだのかと思って心配したよぉ」


「……………ストレスだいぶ溜まってるみたいね。」






明らかに前よりも容赦がない。

これ、このままじゃ死ぬわね。


死ねないのに。






「ぷ、なんだその喋り方ぁ!!」

「この10年でだいぶ女らしくなったみてぇだなぁ!!」






ゲラゲラと汚い笑い声をあげる男二人に吐き気がする。

なぜ同じ笑い声なのに、ルフィやウソップのうるさい笑い声が心地よく思えたんだろう。



「まさかこんなに色気身に付けてくるなんて思わなかったぜぇ」

「海賊にいたんだって?ずいぶん可愛がられたんじゃねぇのか?この身体……」


「………」



男の一人が、ナミよりも小振りな私の胸に手を伸ばしてきた。

抵抗なんてする気力もなく、なすがままに鷲掴まれる。

痛みはあるけれど、さんざん殴られた身体に、今さら痛みで声をあげることなどない。



「もうちょい可愛らしい反応が欲しいもんだ」

「まぁ始めりゃ関係ねぇだろ」




髪を引っ張られ、上を向かされる。

なんだ、胸くそ悪いキスでもされるのか。

そう思ったけれど、彼らは本当にただ出して終わる為だけの行為を始めようとしているのだろう。


座らされ足を開かされた。




あーあ。

私まだ男の人と手も握ったことないのに。




好きな人も、まだできたことなかったのになぁ。





「なれた反応だなぁ…麦わらの一味は変態が多かったのかなぁ?」

「へへっ…確かまだ女いたよなぁ?じゃああいつらも……」





「「っがぁ!!!!」」





広げられ、抵抗しないことが分かり拘束が疎かになった足を、男二人の腹に蹴りを入れた。

別に倒したかった訳でもない。

たとえこの二人を倒せたところで、"あいつら"に制裁を加えられるだけだ。


でも、





「少なくとも、テメェら野蛮人よりは常識と倫理身につけた"人間"だったよ」


「このやろぉ!!!」






許せないんだ。

どうしても。



私の宝物を悪く言われるのが、許せない。




「ぅっ…あ!!ぉえ…!」


「おい死んじまうぞ」

「いいだろ別に!!"代わり"がいる!!」




どうして私、一度逃げたんだっけ。


どうして私、ゼフさんに着いていったんだっけ。







"お前海好きだなぁ"



"……そんなこと"




"だってお前、なんかニヤニヤしてんぞ"









ああ、そうだ。





"誰か"とまた、海が見たかったんだ。







次の島に思いを馳せるルフィと

海流について生き生きと話すナミと

汗だくで延々と鍛えるゾロと

釣った魚を自慢気に見せつけるウソップと

すぐに怪我の心配をするチョッパーと

一緒に皆を見て笑うロビンと



サンジと



皆と広くどこまでも自由な海を見るために、


私は逃げたんだ。







「………やぁっと反省してきたみたいだなぁ」

「おかえりアイ。またあの頃みたいに泣きわめいてくれや。」





「……………っ……」







まだ、皆と海を見ていたかったよ。




まだ、皆といたかった。









涙が溢れてくる。

いつぶりだ。泣くなんて。



止まらない。

拭う手も手錠で動かせない。






こんなに、望むことになるなら、


こんなに、辛くなるなら、








私、あのとき死ねば良かったのかなぁ








「………っう……しにたい」








死んじゃダメなのに








「……ころせよ…っ……ころせ…ぇ!」








暴力振られても、ご飯がなくても、

生き抜かなきゃいけないのに。








「……もう、生きたく…」





ない。




その続きは、小さな小屋に響いた爆音でかき消された。



男たちも、私も、
暗い小屋に突如指した光に目が眩む。

逆光で映ったシルエットは、

この10年いやと言うほど見てきた男の姿。









「………さん、じ」






「引け、テメェら。その女、泣かすのは俺だ。」

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