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ナンパから救う苗木



リクエスト:女の子がナンパされてたとき

どうしよう!みょうじさんとの待ち合わせに遅れてしまった……。待たせちゃってるよな……。怒ってたらどうしよう。幻滅されたかもしれない。

いた!……あれ?誰か男の人といる……。友達?でもずいぶん距離が近いような……。もしかして、……彼氏?デートの約束をやっとこぎつけて、すっかり浮かれてたけど、もしかしたらみょうじさんには彼氏がいた?勘違いしてるボクに気づかせるため、わざわざ彼氏を連れてきたのかな……。あ、男の人がみょうじさんの肩を抱いた。やっぱり間違いない……。ショックだ……。うぅ、行きたくないなぁ……。でも遅れたことはきちんと謝らなきゃ。

「みょうじさん!」

ボクが名前呼んだ途端、こちらを振り向いた彼女が目に見えて安心した。男の人を振り払うと、小走りにかけてきて、ボクの腕にしがみつく。しがみ……つく!?

「あ、あの!すみません!苗木君……じゃなかった。この人が私の彼氏なので、ごめんなさい!」
「なんだよ、男と待ち合わせかよ」

男の人は露骨に態度を悪くし、さっさとどこかへ行ってしまった。その間もぎゅうぎゅうと腕に抱き着かれていて、まるで全身の血がそこへ集中しているかのように熱くなった。やがて男の人がいなくなると、みょうじさんが思い出したように離れた。頬がかすかに火照っているように見える。

「ご、ごめん!勝手に、嘘ついて、しかもくっついちゃって……」
「そ、それは構わないけど……さっきの人は?」
「待ち合わせしてるっていったんだけど、なんだかしつこくて……。でも携帯忘れちゃって、待ち合わせ場所も離れられないから困ってたんだよー」

げんなりしたように説明され、納得すると同時に申し訳ない気持ちになった。全部ボクが遅刻をしたせいだ。くっつかれて、彼氏のふりをできて、ちょっと幸運かも……なんて思っていた自分を殴りたい。

「ごめん。ボクが遅れたからだ」
「ううん。私の方が図々しいことしちゃってごめんね。迷惑かけちゃった」
「全然迷惑じゃないよ!!」

力いっぱい否定したら、思いのほか声が大きくなって、彼女が目をぱちくりさせた。うわっ、これじゃあがっついたみたいだ。慌てて「全部ボクのせいだからさ」と付け足すと、彼女は納得したように微笑んで「そんなことないからね」と言った。

「それにしても、最初見た時はびっくりしたよ。その……みょうじさん、てっきり彼氏と来たのかと……」

妙な空気を誤魔化したくてそう言ったら、彼女は首を必死に横へ振る。

「彼氏いないし、いたとしてもなんで苗木君と遊ぶ約束してるのに連れてくるのー。おかしいじゃん」
「そうなんだけど……。なんだかボク、ネガティブだったかも」
「前向きなのが取り柄なのに?」
「うん。みょうじさんのことになるとつい不安になっちゃって――」

はっとして言葉を止める。彼女も何も言わなかった。恐るおそる隣を見ると、真っ赤になって唇を結ぶ姿があった。

「ねえ、苗木君。なんで私に彼氏がいるって、ネガティブな考えなの?」
「えっ!?」
「どうして私のことになると不安になっちゃうの?」
「え、えっと……」

みょうじさんが前のめりになって問い詰めるので、ついボクは視線を泳がせた。
どうしよう。正直に打ち明けるべきか、ごまかすべきか。彼女の赤らんだ頬に期待してしまうけど、ボクはなかなか決断が下せなかった。

161026