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一松で「図書館の猫」



※ツイッターの140字お題を肉付け

「……お勧めの本は?」
学年の名物である六つ子の一人からカウンター越しに話しかけられて驚いた。図書室で最も日当たりの良い席に座り、読書をしている彼は何度も見かけたけれど、クラスが一緒になったこともなく、私的な会話をしたことは一度もなかったのだ。
しかしすぐに我に返り、図書委員として役目を果たすべく、彼のレンタルカードを手にした。
「どんな話が好き?」
「あぁ……」
どういうわけか、目に見えてがっかりした一松君がカウンターにうなだれるように寄り掛かった。何か気分を害してしまったかと思いうろたえていると、「俺が毎日図書室に通って、どんな本読んでても興味ないよね……当然か」と覇気のない声で呟いた。
「アピールの仕方、考え直してくる……」
言うなりすぐに出て行ってしまったので、口を挟む間もなかった。取り残された私は、ふつふつと熱がこもってゆくのを感じる。
追いかけて「今のってどういう意味?」と問いかけることも、同じ外見の生徒が六人もいるのに、一松君の名前が書かれたカードを瞬時に選び抜いた理由を伝えることも、できなかった。

160115