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どういうことだ説明しろ苗木!



「チッ……この学園は乾燥していかん」
「十神くん、本で指切っちゃったの?ダサッ」
「お前は俺を怒らせたいらしいな」
「別にぃ?あ、これあげるよ。キャラクターものの絆創膏。超高校級の御曹司がこんなの付けてたら笑っちゃうわー」
「こんなもの付けるぐらいなら……」
「十神クン、つけときなよ。バイキン入ったら、危ないよ。ここは、ろくな治療も受けられないし……。コロシアイ生活の中で、一人、病気で死ぬなんて嫌だよね?」
「……フン、苗木のくせに言うじゃないか」
「そうよそうよ、感謝して付けなさいよね」
「お前は黙れ」

「十神くんの読んでる本、つまんなそう!文字ばっかりでさ……。そんなの読んで、何が楽しいの?」
「学のない貴様には分からんだろうな」
「十神クン、読書も疲れるでしょ。さっきから目が辛そうだよ?息抜きに彼女と話しておいでよ」
「どういうつもりだ、苗木。何故俺がこんな女と……」
「超高校級の御曹司である十神クンなら、学のない、ボクたちみたいな人間に、十神クンが見ている世界の素晴らしさとか、高尚さとか、教えてあげなきゃいけないこともあると思うんだ。その練習だと思えばいいんじゃないかな?」
「なるほど……お前の言うことにも一理ある。いい暇つぶしだと思って相手にしてやるか」

「あー、お腹いっぱい……お弁当作ってみたけど食べれなさそう。十神くん、あげる。余ったらもったいないから」
「貴様の安い手作り弁当などいらん。俺ほどの人間はコックの作った料理で舌が肥えていて……」
「十神クン!」
「……なんだ苗木」
「彼女は、わざわざ君の為にお弁当を作ってきたんだよ。お願いだから、食べてあげてくれない?」
「……そうは言ってなかったはずだが」
「オカズ、見てみてよ。十神クンの好きなものばかりだから」

「十神くんなんか、嫌いなんだからね!」
「わざわざそのくだらない感情を俺に伝える理由はなんだ?」
「……なんでボクを見るの、十神クン」
「説明しろ、苗木」
「……多分、彼女は、素直になれないだけで、本当は君のことが好きなんだよ」
「この女が、俺を……?」
「す、好きじゃ、ない!」
「苗木!どういうことだ!?」
「じゃあ、試しに、『俺は嫌いじゃない』って言ってみなよ。それで……謎は解けるはずだよ」
「何……!?フン、それで明らかにならなかった場合は、苗木。お前が責任を取るんだぞ」
「えっ、ボク?」
「おい、お前」
「なっ、何よ、十神くんのバカ!」
「……バカは貴様だ。だが……俺はそんなお前を悪くないと思っている」
「え?!……うそ」
「俺が嘘を言ったとしたら、貴様は微塵も疑わないだろうな。超高校級の御曹司だぞ、俺は。全てにおいて完璧なのだから、他者を騙すことさえ簡単で……」
「つまり、本当に私のこと嫌いじゃないの?」
「……そうだと言っている」
「よかっ……よかったぁあ〜!!」
「……何故、泣く」
「な、泣いてなんか、ないんだからね!私は、別に、嫌いじゃないって言われて……安心なんて……グスッ」
「どういうことだ……説明しろ、苗木!」
「彼女の照れ隠しだよ……。素直になれないだけで、彼女はキミのこと……」
「なるほどな……」
回りくどい、そう呟いて、十神クンは彼女を抱きしめた。
その時、彼の背中へ回された腕は、彼女の唯一の本音だった。

「苗木くん……何をしているの?」
「霧切さん。実は、十神くんから頼まれて、作り物をしてるんだ」
「『ツンデレ辞典』……?あなた、何をさせられているの?」
「さあ……ボクも誰かに説明して欲しいよ」

End

141013