妄想の墓場 | ナノ
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自分で脱げるもん



case.匪口

「待って!わ、私、自分で脱ぐから……」
真っ赤になって彼女が言うので、匪口は手を止めた。正直もう辛抱できそうになかったが、初めての相手を思いやる優しさは持ち合わせていた。
互いに正座で向かい合う。しかし、いくら待っても、服の裾を握りしめたまま固まって動かない。下唇を噛んで指先を震わす彼女が、ますます愛おしくなった。
匪口が身じろぎすると、彼女が肩を弾ませる。硬直した体との距離を詰め、相手の肩に額を乗せた。
「もー待てないんだけど?」
彼自身が思っていたよりずっと、甘えるような声が出た。
息を飲む気配の後、長い髪が流れるように揺れる。肯定の合図。震えの止まった指先が持ち上がり、白い肌を覗かせる。



case.十神

「待って!自分でやる!」
服を脱がそうと触れた途端に叫ばれて、反射的に手を引いてしまった。それが妙に悔しくて、何事もなかったかのようにその場へどっかり腰を下ろす。
「当然だ。俺の手を煩わせるつもりか?」
一瞬、目を見開いた女が、飲み込みの悪い頭を必死に働かせ、ようやく理解したらしい。だんだんと俯いた耳が見て取れるほどに熱を孕んでいるので、先ほどの言葉を早々に撤回したくなった。
「……早くしろ。俺はそんなに気が長くない」



case.白澤

「待ってください、白澤様……私、自分で脱げますから」
そう言ったくせに、なかなか身体を見せてくれないなぁ。服の裾を掴んだ手を震わせたり、握りしめたり、覚悟を決めたような顔つきになったかと思えば脱力したり。くるくる変わる表情が、なんとも可愛らしい。しばらくは観察していたけれど、僕もそんなに、辛抱強いタイプじゃないんだよね。こんなんだから、タオタロー君には、神様なのに欲深いってよく言われちゃうんだけどさ。
「なまえちゃん、君の恥じらってる姿を見てるのも楽しいけど、僕も、もうそろそろ限界かな?」
迷う手に自分の掌を重ねる。親が子を導くように、彼女の衣服をほどいていった。



case.赤羽

「自分で脱ぐから」
彼女は不機嫌な表情で、カルマの手を、やんわりと押しのけた。彼はそれが照れ隠しであることを理解していたけれど、わざと真似てつまらなそうにしてみせた。
「俺が脱がせたい」
「やだ」
「どうせ脱ぐんだし、誰がやろうと変わらないでしょ」
「カルマ、無理やりだから嫌なの」
ふて腐れて横を向く彼女に、カルマは思案する。機嫌を損ねて楽しみ自体が無くなることを恐れ、仕方なく了承した。
しかし、どれだけ待とうと彼女は脱ごうとしなかった。と、いうのはカルマの主観で、実際は一分と経っていない。中学生男子の欲望を抑えるのは、そう簡単にはいかないらしい。
「はい時間切れー」
「は!?」
「バンザイして、バンザイ」
言うと同時に腕を掴む。まっすぐ伸ばさせて、服の裾を持ち上げた。彼女は強く目をつぶったが、無理に引き抜かれることはなかった。丁寧に、優しく脱がされた服がベッドの下へ落とされる。
それを見て、彼女は彼が、先ほどの言葉を気にしてくれているのだと知り、こっそり頬を緩めた。



case.アルミン

「……自分で脱げるから」
彼女にそう言われてしまえば、手も出せない。アルミンは素早く身を引いて、少し離れたところに正座した。居心地の悪い空気に耐えるよう俯くと、誤魔化すような咳払いが聞こえた。
それからどれぐらいの時間が経ったか、彼には分からない。なかなか聞こえない衣擦れの音。不安になって、恐る恐る顔を上げれば、案の定、羞恥に頭を垂れる少女の姿があった。アルミンは恐る恐る提案する。
「良かったら僕、背中向けてるよ?」
彼女が面をあげる。アルミンは目があって、ギクリとした。しかし静かに首を横にふるので、意図がわからず見つめ続ける。
「ううん。やっぱり……脱がして」
アルミンは喉を鳴らしてしまい、気まずい思いをした。

140314