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匪口さん、こないの



「こないの」
意味が分からず沈黙した俺に、察した彼女が「生理」と付け足した。走馬灯のように心当たりが脳裏をよぎった。ついでに体が熱を持ちそうになって理性で抑える。そんな場面ではない。
「どれぐらい?」
「三か月」
「なんでもっと早く言わなかったの?」
「私、不定期だから」
彼女の腕を掴み、強く引きそうになって、もう一つの生命が存在している可能性を思い出し、慌てて力を緩めた。
「どうしたの、結也?」
不安げな声に、「検査に行くよ」と返す。思いのほかぶっきらぼうな声が出て、彼女の体が震えたのを感じた。
駄目だこんなんじゃ。急に冷静になって足を止める。
踵を返して向き合うと、泣き出しそうな彼女と目が合った。とても母親にはなれそうにない、一人の少女を強く抱きしめる。
「ごめん、俺てんぱってて。肝心なことすっ飛ばした」
「え……?」
「こんなことになったけど、安心していいから。同い年の奴らよりは稼いでるし。もし子供ができたって――」
そこで一度口を閉じる。だから、順番おかしいだろ俺。よっぽど混乱しているらしい自分に、心の中で突っ込んだ。
「――ちがくて、一番言いたいのはこれだった」
抱きしめていた体を解放してやったら、はずみに涙がこぼれ落ちた。少し赤くなった目をまっすぐ見つめていう。
「結婚してください」

140202