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匪口さんが吸血鬼



俺、実は吸血鬼なんだよね。そう言ったらあんたはどんな顔するだろう。冗談だと思って笑い飛ばすのか、恐怖に震えるのか。今のところ試す勇気はない。
彼女と付き合い始めてからはトマトジュースを代用に堪えてきたけど、それでもこの体に生まれた以上、誰かの血液は不可欠だ。ベッドの上で彼女を抱きしめる時、つい、試すように首筋へ歯を突き立ててしまう。俺がじゃれていると思ってあんたは笑うから、その都度ほっとする。だけど、同時にこのままじゃダメだとも感じる。大切にしたいから隠したいというのは建前で、実際のところ捨てられるのが怖いのだ。
「匪口、最近元気ない?」
「まー、笛吹さんの人使いが荒いからね」
「嘘。なんか……やつれ方が違うよ」
飛びつくように抱き着かれて、彼女の匂いが香った。柔らかい肌の向こうに流れる血液を想像して、眩暈がする。
ありがと、大丈夫。そんな風に返しながら、首筋を唇で挟む。もしこのまま思い切り歯を突き刺して、血をすすったら、俺達はどうなる?限界を訴え始めた理性の扉を欲望がノックしている。頭の中で響くそれは、俺の八重歯を鈍く光らせた。

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