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折原さんが吸血鬼



第一に清潔感は欠かせない。好みの女子ならなおさらいい。サラダバーをこよなく愛する子は悪くない。いい匂いの血液が流れている。
「は……ぁ……」
熱っぽい呼吸を聞きながら、刃物を取り出す。一瞬だけ恐怖を瞳に浮かべたけれど、目を閉じることで彼女は逃げた。文句を言われないのをいいことに、彼女の服をずらして肩口を晒す。俺がナイフを慎重に滑らせると、赤い血液がぷくりと膨らんで線を引いた。直接歯を刺しこむ方が早いのは分かるけど、どうしても俺は肌を突き抜ける感触が受け入れられないのだ。
「いただきます」
こぼれそうになった血を、一滴も逃すまいと舌を這わせる。彼女が俺の服を懸命に握りしめるので、しわになっちゃうなあ、と脳の冷静な部分が考えた。だいたいそれが二割ぐらい。あとの八割は血、血血血血血血血血血血血。
「奈倉さん……」
求めるように彼女が呟くのを聞き、不意に現実に戻された。偽名を伝えていたことを思い出し、急速に熱が冷めていく。
「折原」
「……え?」
「俺の本当の名前」
「折原、さん?」
「そう。もっと呼んで」
ただの食事のはずなのに、濡れた瞳に見つめられると、鼓動が早まった。柔らかそうな唇がふるえると、抑えきれない興奮を覚えた。俺はいつからこの子の血液だけをすするようになったんだろう。誰でもよかったはずなのに、もうずいぶん前から彼女の首筋は傷だらけだ。

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