▼ 1度あれば2度、3度とあったり
本日は勤務ではなくおつかいを頼まれました
バイト先の店長に渡されたのはお財布と手書きの地図だけ
急ぎと言うわけでもないようなので、あまり急がず
正確に探し出したいと思う
「あの先をまっすぐいってー…」
手書きの地図の読解に精一杯の自分だが周りの音ぐらいは聞こえます
「きゃああ、無免ライダー!」
「にげろおおお!」
ライダーものも流行っているのですね、ヒーローの一種ですね
わかりますわかります、子供も大人も夢中というこの流行度と言ったら…
それにしてもいくら特撮だからってごっこだからって、国全体であげてるとは言え、彼を放置することはないとおもいます
周りには逃げずにいた黒いタイツを着た集団だけ
でも、なんだか取り込んでいて彼が倒れてることに気づいてないのかもしれない
「あの、大丈夫ですか?」
「に、にげてくれ」
「いえ、私は大丈夫なので…その血のrいえ血は大丈夫ですか?」
「あ、ああ…これくらい、ぐ」
「そうですか、腕の向き方向が私と違います」
「え、ああああ!いたた」
「…病院行きますか」
そう尋ねると彼は大人しく頷いた
彼に肩を貸そうとしたところ断られ代わりに自転車を頼まれた
愛馬的な存在なんですね、わかりますライダーさん
そんなやりくりの最中にタイツ集団が道を尋ねてきた、悪役なのだろう…ライダーさんがものすごく警戒していた、形だけでもしっかりしないといけないのか
両手をひろげ、私を守ってくれていたようで…片腕アレですが
けど、やっぱり撮影も終わっているようなのか、次の収録場所へ急がなければならなかったのか道を教えたらお礼を言われ去っていった
でも、ライダーさんが気絶した
「店長のおつかい…どうしましょう」
言い訳はあとで考えるとして、病院に無事送り届け彼は目を覚ました
「起きましたか」
「あ、ああ…君は」
「七面鳥の蒸し焼き娘っていいます、ただの通りすがりです」
「いや、感謝する…ありがとう、病院まで運んでくれて」
「いえ、大丈夫です。どこか痛いところないですか?」
「ああ、まぁ…この腕以外は大丈夫かな」
「その腕数週間で治るみたいですよ、よかったですね」
「そうか、いろいろと迷惑をかけてすまないな」
「いいんですよ、でもあんまり無茶しすぎるのもよくありません」
「……無茶か」
彼の顔は暗くなってしまった
なんでだろうと考えていたが、もしかしたらこの人はよっぽどの職人さん気質!
これは彼の夢を打ち砕いてしまったという事になるのかもしれない、私なりにそれだけは阻止したく考えに考えた末に
前にサイタマさんから借りた漫画本にあったそれらしいカッコイイ言葉を口出して彼の夢を鼓舞することにしました
「けど、無茶をしなきゃその先へは進めませんよね!!」
「え」
「なので、若いうちはたくさん無茶してください!!今日みたいに!!」
今日何があったのかはまったくわかりませんが、あの漫画のセリフこんなんだったっけと少し疑問に残りながらも、とりあえず…しておいてください
私がライダーさんを悲しませ夢挫折フラグは作りたくないんです、まじです
仮にもヒーローしているのだから…ファンクラブありそうで、う…最悪の事態をなんとか私は避けたいです、避けさせてほしいのです!
私は彼の片手を両手でにぎり、熱弁しました
「励ましてくれて、ありがとう…えと、七面鳥の蒸し焼き娘さん」
「いえいえ、それじゃ私はもうこれで」
もうそろそろ行かないとお店閉店しちゃうだろうし
席を立ち彼の病室から出ようとしていたらライダーさんに呼び止められた
「よかったら今度お礼させてもらえるかな」
「あ、大丈夫ですよ。そんな対したことしてませんから、あと自転車は駐輪場にありますので忘れずにとりにいってくださいね」
「ああ、でもこのままじゃヒーローとしての俺の気が済まない」
「え、ああ…」
確かにこのままじゃヒーローが市民に助けられたパターンですよね
彼は典型的な正義のヒーローをやっているのかもしれない
うちの近所のサイタマさんもヒーローやっているけど金欠でよくごはんを貰いにうちへくるし…めっちゃ市民に助けられる
少し迷ったが今度私が勤めているバイト先に来てもらうことにした
売り上げとして貢献した分、もしかしたら時給あがるかもしれないし、あざといけどこの世界は優しくないのだ
事実、いくらヒーローやってても腕がアレしちゃった彼を放置して、みんなどっか行っちゃいましたし、おそらく同じ共演者であろうタイツ集団もどっか行った
人に優しくない世界、それは証明されていた
「俺は正義の自転車乗り無免ライダーだ!よろしく!」
「うん、よろしくねライダーさん」
「今度こそは七面鳥の蒸し焼き娘さんを必ず守ってみせる!」
今度あるんですか…あまり期待したくない未来に遠い目をしつつ、
私は店長に言い訳のメッセージを打ち込みながら、病院から去ろうとした
ちょうど出入り口の自動ドアの前に立つと
後ろから肩を掴まれた、さすがにびくっとしてしまい少し警戒心が芽生える
「おおお、おい!そこのおまえ…!」
「はい?」
「これをやる…だから、今から話すことを…忘れてほしい…!」
「何ですか、あといりません」
「ど、どの科に行けばいい………」
またタイツぽい服を着た細身の青年が何かを訪ねてきました
黒髪に紫色スカーフの青年に渡された封筒を返して、彼を見てみると…おどおどしているようで、あまり聞き取れなく聞き返すと睨まれました、理不尽です
「お、おれの…下部が、くそ」
「…」
「つまり、あれだ…その…」
男がそれを小声で私の耳元に囁いたとき、私は身の危険を感じ始めていた
「痴漢ですか?セクハラですか?」
「誰が貴様の様な小娘などに…おれは、く」
下半身を必死に抑えて、ぷるぷるしてるあたり痛そうにも見えます
「あの青い看板を左に曲がって、それから泌尿器科を探し」
「感謝する!さらばだ!」
目にもとまらぬ速さで、男は小走りしていった……内股で
これはこれですごいですね、芸人さんでしょうか
今日は、よくタイツの人にお会いする一日でした
思い返せば、ライダーさんも若干タイツでしたね…なんて日なのでしょうか
「あ、メッセージ…早く送らなければ!」
スマホに両手でメッセージを打ち込む、さっきより早く的確に言い訳を
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