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0903 続かなかったマルコ長編



飛んできた酒瓶を首をかしげて避ける。ああメンドクセェ。後ろのほうで俺の隊のやつらと海兵が戦っている。

一番隊で偵察に行くことになった。だからパドルシップで先にこの島に降りた。一通り偵察を終え、夜この酒場で飲みだした。しばらく飲んで、ほろ酔いになったときに手が当たったとか当たってないとかで他の海賊ともめだした。それを見ていた店主が通報、海軍がくる。で、今に至るというわけだ。偵察だから大人しくしとけよいっつったのにこれだからまったく困ったもんだ。


「おいお前ら、ほどほどにしとけよい」
「大丈夫ッス隊長!俺ら負けないッスよ!!」
「……あぁ」


そういう話じゃねぇんだがなァ。
苦笑いをして酒を煽った。怯えてカウンターの下で震えてる店主に酒の追加の声をかける。震える手で出された酒を貰おうとしたとき、伸ばした手を後ろから掴まれた。白い袖からして海軍だろう。後ろで呆然としているらしい一番隊のやつらをかいくぐってここまで来れたとは、中々のやつが来た。
しかも、手の感じからすると、女。


「不死鳥マルコ」
「強引な女は好きじゃねえなァ。……手、離せよい」
「離すと思う?」
「もう一度言う、離せよい」


パリン、握っていた酒瓶を握り割って覇気を少しだけ出す。すると女の手はあっさりと離れていった。なんだ、これくらいでびびるような奴だったのかよい。少しは楽しめそうだと思ってただけに興醒めだ。

そろそろ決着をつけようか、そう思いゆっくり立ち上がって振り向く。どんな女が後ろにいるのかと思ったら、怯えなど欠片も見えない、やけに冷めた青い目をした、金髪の女がいた。


「どんだけでけェ女がいるかと思ったら、……なァ」
「なぁってなに。さっさとどっか行ってくれない?捕まえもできないあんたら相手にしてる暇ないの」
「お前、海兵だろい。捕まえもできないとか言っていいのかよい」
「上に聞かれなかったら何言ってもいいのよ」
「それ、海兵としてどうなんだよい」
「うるっさいな……捕まえられないけど、追い払うくらいならできるわよ」
「へェ、………やってみるかい?」


挑発的な言葉に、やっぱこうでなくちゃ面白くないと女の顎を掴んで俺から顔をそらせないようにしてやる。女の青い目に映る自分は、やけに楽しそうな顔をしていた。


「鳥になって逃げるのはなしよ?不死鳥サン」


冷え切っていた目が、一瞬だけおもしろそうに光った。



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「よお」
「………」
「誰かわからねェか」
「………なにしてんの」
「会いに来たよい」
「いや………すごい迷惑」
「お前今日はコート着てねェんだな」
「今日はオフなの。だからすごい迷惑。てかなにそのサングラス、変装のつもりなの?ダサ」
「似合ってるの間違いだろい。惚れてくれてもいいんだがな」
「…………お引き取り願います」


あのあと結局あの酒場からは追い出された。
女の言った通り、俺を捕まえるほどの力はないにしろ、女は強かったし頭もよかった。あの女の戦闘中の表情と目つき、不敵に笑う顔とか、楽しそうに緩む口元とか、気に入った。
よし拐おう。
そう決めるのに時間はかからなかった。
イスに座って喫茶店で本を読んでいた女の本を取り上げ、後ろからテーブルに手をつく。腕の中に閉じ込めて、耳元で話しかけた。


「お前俺と来いよい」
「は?」
「海軍なんてやめちまえ」
「……いやなんで」
「俺が気に入ったから」
「意味がわからない」
「まァ、すぐいい返事が聞けるとは思ってないよい。今日はオフなんだろ?どっか行くか」
「いやいやいや、なんで私の予定あんたが決めるかな」
「どうせ暇なんだろい?」
「失礼ね」
「ほら、行くぞ」



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流れにのって海軍に入ってみただけで海賊が憎いとかじゃない主。むしろ自由奔放で戦闘好きな性格の主は海賊のが合ってる。海軍やめようかなーって思ってるけどやめる機会がなくてズルズルと海軍やってたら気づいたら大佐になってた。
結局マルコに誘われたことをきっかけにして海軍やめて海賊になる。って話を書きたかった、のだけど。
飽きてしまった




2012/09/03 13:36