03



あれから10ヶ月、とうとう来てしまった受験日。
やっべぇ勉強と朝のランニングくらいしかやってねぇ!

そして今の時刻朝の5時。
一睡も出来ずに受験に臨むしかないのか。
とりあえず布団から出て顔を洗う。

「んー、眠い」

やっべぇボロ出しちゃったら私絶対不合格じゃないか。
あー、とりあえずシャワー浴びよ。

洗面所の外側のドアに『入浴中』の張り紙をセロハンテープでくっ付ける。
そんで入浴シーンは割愛。

いつも通りの中学の制服に袖を通す。
まだ皆寝てるもんな。
はぁー、筋肉痛になったら嫌だし身体やすめとこう。

「あれ、お前起きてんの?」

「一睡もしてないです」

「え、今日受験日だろ? やばくね、ドンマイ」

そう言って笑ったのが私の兄の光貴。
ちなみに大学生。
皆さんが期待している様なイケメンではありません。
フツメンです。
大学生の癖に実家暮らしです。

「うっさい、ご飯まだ?」

「んじゃ母さん起きしてこいよ」

ふあぁと伸びをしながらテレビをつける兄。

「お、雄英の受験のこと。ニュースになってんぞ!」

「いやまぁ、雄英だしねー」

「あれ? 二人とも起きてたの? すぐご飯作るね」

まだ寝ぼけた目を擦りながら階段をパタパタとおりて来たのは私の母。

「母さん、こいつ一睡もしてないらしいよ」

「え? 今日受験日でしょ? 眠くない?」

「眠いです、めっちゃくちゃ」

くっそ眠い。
あくびが出まくる。

「はい、さっさと食べなさい」

「え、いくらなんでも早過ぎね?」

「昨日の残りです」

疑問系に問いかける兄。
私は無言ですき焼きをずぞぞぞぞとすする。
美味い、だけど朝からすき焼きとか平気なのかな。

「パパは?」

「今日仕事休みだからまだ寝てるよ」

「そろそろいってくる」

飼い猫のプリンの頭を撫で、水筒やらなんやらを黒色のリュックに詰める。
それを背負い、玄関を素早く出た。

「えーと乗り換えは一つか……」

実は私は電車の路線が苦手だ。
中学三年生なのに路線を覚えていない。
と言うのも中学が近くて徒歩で登校できたからだ。

駅に着いた。
まだ6時半くらいだがサラリーマンや学生たちがわらわらと居る。
ひゃー、こりゃ満員だな。

改札を潜り抜け電車に押し居る。
人口密度が高いせいで熱気が熱い。
それにすし詰め状態で身動きが取れない、ちょっと動いたら睨まれるし……。

はぁ、この状態で30分とか最悪だ。
タバコ臭いし熱いし汗臭い。
そしてキツイ香水の香りも混ざりなんとも言えない匂いになっている。

「あつ……」

私の小さな声は電車の走る音にかき消された。




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