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少し前の夜に足を水に浸して遊んでいたら少し風邪気味になってしまった。鼻をグズグズさせながら店先に座っていたらふ、と影が出来て視線を上げればいつもの如く笠を被った高杉さんが立っていた。

「……こんにちは」
「何してんだ」
「ちょっと、鼻、が……」
「……あんな場所で水遊びなんてするからだろ」
「な、何で知ってるんですか!?」
「…………」

何かマズイ事を口走ったのか高杉さんは笠を目深に被って黙ってしまう、立たなきゃと思うがうまく立てなくて壁に手をついた瞬間に体がふわ、と浮いて煙管の煙の匂いが香ったと思ったら目の前一杯に紫色が広がる、

「た、か……」
「とっとと寝てろガキ」
「大丈夫です、」
「……俺の前でぶっ倒れたらほっとくからな」
「え、そこは運んでください」
「お前は男っつーもんを知らなすぎだなァ」

これ、何て言うんだっけ、壁ドン…?
顔にかかる吐息が妙に熱くて、心臓がドクンと跳ねた。じわじわと高くなる体温は、熱っぽいからとかじゃない。

「男って、……みんな、狼ですか」
「はっ…精々気を付けるこったな」
「あの、とりあえず、離れていただければ…」

そういうの、耐性ない。
困る、困ります。

そう心に念じていたけれど高杉さんはふ、とその手で私の視界を覆った。暗くなった視界の中で高杉さんの熱い吐息が首筋にかかって背中がぞくぞくする。

「お前、隈」
「……………………へ」
「隈」

手が外されて明るくなった視界で見えたのは高杉さんのあの射抜くような瞳だった。
そのまま、あの無骨な指先が目元を撫でていく。
相変わらず冷たくて固くて、優しくもなんともない手付きだけどそれでも何だか満たされてふ、と笑ったら「何笑ってんだてめぇ」と頬をつねられた。痛い。

「ね、ねむれないんですよ、たまにそういう日があるんです」
「悪夢でも見んのか」
「……分かってるなら言わないでください」
「悪夢で寝れねぇとは……本格的にガキだなお前」
「………………」
「拗ねてもガキ臭さが増すだけだぞ」
「もう子供で良いです、でも子供が一人で眠るのって寂しいんですよ!」
「開き直ってんじゃねぇよ」

高杉さんはそう言って建物を背に座ると私も座らせた。

「寝ろ」
「……こんな、路地裏で?」
「いいから寝ろ」
「肩貸してくれるんですか?」
「…勝手に解釈しろ」

言われるがままに肩に頭を乗っけても何も言われなかった。温かな体温にだんだん安心してきて、瞼も重くなってくる。ああ眠い、でもお礼言わなきゃ。襲ってくる眠気にあらがいながら私は口を動かす。

「たかすぎさん……」
「…………今度は何だうるせぇ」
「ありがとう、ございます……」
「…気持ち悪ィ奴」
「ふふ……」

眠りにおちる時はいつも暗いところに引きずり込まれるから嫌いだった、今も例外じゃなくそんな気分だけど今は、今だけは優しい夢を見られる気がする。隣にいる温もりが知らない内にいなくならないように着物の袖を掴んで私は眠りについた。

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