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『こんな世界なんて、壊れてしまえば良いのに』

そう言って笑った女の顔を俺は忘れる事はないだろう。
その日以降あいつは暗い顔や幕府に対する事を言うことはなかった。思い出すのも嫌なのか、それとも言うだけ言って満足したのか理由は定かではない。
窓の外で月を見ながらふう、と煙を吐き出す。

「あれれ、一人酒?いいなぁ、俺もまぜてよ」
「…………」

まぜてよと言うわりには勝手にズカズカ入り込んで来たピンクのアホ毛を携えた男は胡散臭い笑顔を浮かべながら徳利を傾けて勝手に飲みだす。戦闘狂のこいつは俺と戦いたいらしく、こんな星まで着いてきてよく分からない同盟が組上がっている。

「最近シンスケ楽しそうだよね」
「あぁ?」
「何かおもしろい奴でも見つけたの?強い?俺にも紹介してよ」
「たとえ見つけたとしてもてめぇには教えねぇよ」
「はは、まぁ俺にはもう2人おもしろい奴見つけたし、その2人と戦うまではとりあえず良いかなぁ」
「ほざけ、俺と一戦交えて他の奴と戦えると思うなよ」
「その言葉、そのままラケットで打ち返してあげるよ」

つくづく腹が立つ野郎だ。
今ここで斬り捨ててやりたいがまだ価値はある、戦闘能力然り第七師団然りだ。ピンクのおさげを揺らしながら酒を飲む男と月見なんざ、酒が上手くなるわけがねぇ。こいつにとっては酒が飲めれば風情や景色なんぞどうでも良いのかとにかく飲む。ザルかこいつ。
静かに飲む計画が台無しだ、諦め半分でふと外へと目を向ければ見慣れた亜麻色の髪の女が一人水辺に座っていた。

「…………」
「ん?何かいた?」
「……いや、」

そいつは水に足を浸しながら手でパシャパシャと弾いている。髪が月に反射して、光っていた。
水に反射している月と星を眺めながら座っているそいつは危機管理能力がバカみたいに低いらしく、自分が男に襲われた事があるのを覚えているのかすら怪しい。だが、流れてきた花を掬い上げて微笑むあいつの姿を肴に飲む酒は存外悪くなく思えた。

ようやくうまく酒が飲めそうだ。

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