サド王子とエム姫


昔々ある所に華と言う名前の女の子がおりました。
女の子の父親は早くに亡くなり、継母とその連れ子の姉たちに日々いじめらる毎日を過ごしていました。


「ちょっとー!?納豆のストックがもうなくなったから買いに行きなさいって言っといたわよね?まだ行ってないの?」

「あやめお姉様。申し訳ありません、すぐに...」

「本当にグズなんだから。さっさと行ってきてよね」


あやめは、連れ子3姉妹の三女で納豆や、趣味のSMグッズをよく華に買いに行かせている。
今日のお使いは、納豆の方だったので華は心の底から安堵の表情を浮かべた。


「華さん、ちょっといいかしら?」


次に呼んだのは、次女の妙だった。


「窓の外に野生のゴリラがいるの。早急に追っ払ってもらえるかしら?」


窓の外をみると、近藤という妙のストーカーが来ていた。
直ちに追い返します。と言うと、二度と私の視界に入らないようにしてね。と笑顔で言われる。


「オイ、華」


次に声を掛けたのは長女のキャサリン。


「では、ゴリラの排除に行って参ります」

「ワタシヲ無視シテンジャネーヨ!!」


キャサリンを無視し、ゴリラを排除、そして納豆を買いに街へ出かけた。


「華」


声を掛けて来たのは、パーカーの帽子を深く被り、マスク姿の青年。
あやめにお使いを頼まれた時に行く、SMショップの常連客だ。


「今日は、あの店行かねーんですかィ?」

「今日は、お使いを頼まれていませんので」

「またまた〜、お使いとか言って本当は自分が使ってんじゃ「失礼します」


華は、少しイライラしながら青年を無視して歩いた。
だが青年は、無視された事を気にしていない様子で話かけるのをやめようとしない。


「今度城で舞踏会があるらしーんでさァ。アンタは行くんですかィ?」

「舞踏会...?私には縁のない場所です」

「この街に住んでる女は強制参加らしーぜィ」

「...行けたら、行きます」

「知ってやすかー?ここの王子相当なドSで、舞踏会に来なかった女はピーしてピーされて、ピーの後にピーにされるっつー話しですぜィ?」


青年の話しに、華の顔は青ざめる。


「そ、それ、本当ですか!?」

「舞踏会、頑張って参加して下せェ」

「が、頑張ります!!」


パーカーの男が不敵な笑みを浮かべた事など気づかず、華は急いで納豆を買い、家へと戻る。



「お母様!!」


家に戻りつくと、継母を呼び止める。


「なんだい、騒々しいね」


継母のお登勢は、華に呼ばれ顔を歪める。


「お母様、お願いがあります。今度の舞踏会。私も参加させて下さい」


華がお願いすると、予想外にも参加を許可してやる。と言われた。


「ただし、着て行くドレスがあればの話だけどねぇ」


そう言うと、華の元を去る継母。
華は、お金はもちろん、ドレスなんて高価な物を持っているはずがなかった。
どうすれば良いか分からず華は自室で塞ぎこむ。


「どうしよう...。舞踏会に行かないと...私の貞操が...!!」


悩む華。悩んでいても解決する事は出来ず非情にも月日は流れ、舞踏会当日となってしまった。


「じゃあ、あたし達は舞踏会に行ってくるからね。留守番頼んだよ」

「行ってらっしゃいませ...」


4人を見送り、自室でため息をつく華。
塞ぎ込んでいると、名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


「華、おい、華!!...舞踏会行きてぇか?」

「誰ですかアナタ。不法侵入ですよ。警察を呼びます」

「待て待て!!オレは、魔法使いだ」

「魔法使い〜?天パの魔法使いとか聞いた事ありませんよ」


天パ関係ねーだろっ!とツッコミをいれた後、自称魔法使いは、カバンの中から何かを取り出す。


「ほらよ、ドレスと、靴。これがあれば舞踏会行けんだろ?」

「魔法使い様!!ありがとうございます」

「おう、楽しんで来いや」


ドレスに着替え、ガラスの靴を履き、急いで城へと向かう華。
城へ着いて顔を出せさえすればコッチのもの。さっさと行ってさっさと帰ろう。
そう思いながら走っていると城壁が見え、城の兵隊に中へと案内される。
城の中はとても煌びやかだった。
だが、華にとってそんな事はどうでもいい事であり、とりあえず食事に手を付ける。

しばらくすると、パッパラーッとラッパの音が鳴り響く。


「ソウゴ・ドエス・王子のおな〜り〜」


兵隊の声と共に王子が登場する。
女性達の黄色い声が城内に響いたが
華は、王子にこれっぽっちの興味もなかった為、ひたすら食事にありついた。


「華、来てやすかィ?」


王子に自分の名前を呼ばれ食事が喉につかえ、咽せる。
辺りを見回すと、私が華です!!と挙手する者がたくさんいた。
同名の人であろうと思い、また食事に手を伸ばす。


「おい、そこの飯喰ってる女、お前を呼んでんでィ」


王子が指差す方向。
間違えなく自分だった。何故王子に呼ばれたのか分からない。
華は面倒事に巻き込まれたくない一心で走って逃げる事にした。


「3番隊、4番隊!!あの女を追えィ!!」


華は何十人もの兵士に追いかけられた。
ドレスの裾を持ち上げひたすら走った。靴は何処かに脱げ、裸足の状態で城の外へと出ると、


「悪ぃな、これも仕事なんだよ」


瞳孔の開ききった兵士に剣を向けられ止まる。
華は、両手を上げて降参です。と呟と、手に手錠をかけられ城へ逆戻りさせられる。


「アンタも災難だったな、アイツに気に入られて」

「アイツって...」

「王子だよ」

「なんで、王子が私なんかを?」

「さぁな、それは本人に直接聞きな」


そう言うと瞳孔兵士は何処かの一室に華を連れて行った。
扉を開けると、かなり高級な作りの部屋で、中には王子の姿があった。


「連れてきたぜ」


ぶっきらぼうな兵士の声と共に華は王子の前に差し出される。


「...王子様、逃走した事大変申し訳ありませんでした。ですが、何故私をお呼びになったのですか?」

「アンタを妻にしようかと思いやしてねィ」


王子の一言に華の頭の中は真っ白になる。


「いえいえ、ご冗談はおよし下さい」

「冗談じゃありやせんぜィ」

「いや、いーですから、そういうドッキリ」

「ドッキリじゃありやせんぜィ」


現実を見ようとしない華にため息を着く王子。


「土方、お前は下がっていいですぜィ」


王子が指示を出すと、兵士は部屋を出た。
部屋には華と王子の2人だけ。


「あの、本当に帰らせて下さい。いや、マジで」

「王子のオレにそんな事言うんですかィ?」


ジリジリと距離を詰める王子。
華はその王子との距離を取る。


「観念しなせェ。同じ趣味同士楽しい事しやしょうぜィ?」

「ちょっ、ちょっと待って下さい。同じ趣味とは...?」

「SMショップで、よく会ってたじゃねーか。なぁ、華」

「あ、あなた...まさか」


華は頭の中にパーカー、マスクの青年が過った。


「あの、私本当にSMの趣味とかないので!!姉が好きなんです!!姉がクソみたいなドMなんで、王子様とも気が合うんじゃないですか!?」


姉を紹介しますよ!!と叫び続ける華だったが、その行為も虚しくベッドに押し倒される。


「オレがアンタを気に入った理由...教えてやりやしょうか?」


涙目になりながら華は頷く。


「SMショップで、恥ずかしそうに買い物するアンタ見てS心が疼いたんでさァ」

「それだけの理由!?」

「後はそうですねィ。オレが王子だと知っても媚て来ない所とか、逃げ出そうとする所とか...とにかく、お前はオレのS心に火をつけちまったんでィ。オレの物になって下せェ」

「えっ...いやで「さぁ〜て、初夜を楽しみましょうぜィ」


こうして華と、王子様はめでたく結ばれたのでした。
めでたし、めでたし。


(さァ、華。Mに開拓してやりやすぜィ)

(この、サディスト王子!!)


☆裏設定☆
魔法使い銀さんは、魔法使いではなく沖田王子に雇われて華にドレスと靴を渡しに行っていました。

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