沖田君とインテリ女

真選組にあの女が来てから2ヶ月。
オレは正直あの女が苦手だ。
土方のヤローと仲いいみてぇーだし、馬鹿みてーにまじめだし。
真選組に女はいらねーし、まじめなやつもいらねぇとオレは思う。


「沖田隊長」

「なんですかィ?」

「書類の提出がまだのようですが、出来てるんですか?」


そう、コイツは主に書類の管理を任されていて毎日のように書類を出せとせかしてくる。
土方のヤローに頼まれてやってんのは分かるが、なんか腹立つ。


「そのうち出すんで、ほっといて下せェ」

「昨日も同じことを言われてましたね。提出する気はあるんですか?」

「出せ出せ言われると出したくなるもんでさァ」

「では、どうしたら提出してくれるんですか?」

「アンタがオレの元に表れねーなら出してやらァ」


女は、そうですか。と一言呟くとオレの前から姿を消した。
やっぱ、可愛くねぇ女。普通の女ならもっといい反応するだろ。
こんなにS心がくすぐられねぇ女初めてだ。

屯所に居て土方のヤローに見つかったらめんどくせぇし、オレは外へ足を向けた。


「…銀さんってば」

「いやいやいや、マジだって〜」


町をブラブラしていると、会いたくなかったあの女の姿。
しかも、旦那と一緒。


「華ちゃ〜ん、いいじゃん、どっか遊びにいこうぜ」

「私、まだ勤務中なんで無理ですよ」

「やめちまえよ、あんな仕事。税金泥棒たちと居たら華ちゃんの貞操が危ないって!」

「そんな事ありませんよ。今の仕事好きなんです。私」

「へ〜、いつでも万事屋に迎え入れる準備は出来てんのによ〜」

「では、クビになったらお願いしますね」


微笑みながら旦那の元を去る女。
…なんでィ。笑えるんじゃねーか。


「旦那〜」

「ん?なんだ、総一郎君じゃねーか」

「旦那ァ、総悟です。…つーか、あの女知り合いスか?」


アァ?華か?
と頭をボリボリかく旦那。


「あの堅物女が旦那のタイプだなんて意外でした」

「堅物〜?分かってねぇなガキは。ありゃすげーいい女だよ」

「…オレには分からね〜や…」


旦那と話してるときのアイツ。確かにいつもと違った。
別に違う一面見たからってなんとも思いませんがねィ。
ブラブラ町を歩いても特に面白ぇ事もなかったので屯所に戻る。


「おい、総悟」


近藤さんに呼ばれ振り返る。


「今日の夜は明けとけよ」

「なんかあるんですかィ?」

「華さんのな、歓迎会がまだだったろ?今日行おうと思ってな」


なんでオレがアイツの歓迎会に参加しなくちゃなんねーんでィ。
パスでっつー返答をしたら、珍しいな、お前が飲みの席に出ねーなんて。と不思議そうな顔をされる。


「総悟、お前は強制参加だ」


口を割ってきたのはあのヤロー。


「テメー、華と仕事以外で話した事ねーだろ。
お前は、一方的にアイツを嫌ってるようだが悪いヤツじゃねぇ。オレに頼まれた仕事をやってるだけだ」

「別に、毎日書類せがまれるから嫌ってるワケじゃねーですぜィ。あのスカした態度が嫌いなんでさァ」


ハッキリ言ってやると、近藤さんと土方のヤローが眉を歪める。
ちょっと言いすぎやしたかねィ。


「総悟…お前はまだ、華さんのいい所が見えてねぇみたいだな。あれはいい女だよ」


近藤さんも旦那と同じ事を言う。
確かに顔だけ見りゃー上玉かもしんねェ。
だけど、やっぱオレはアイツのことが気にくわねェ。


「飲み会、顔出せよ総悟」


近藤さんに言われちゃ、顔出さねーワケにはいきやせんねィ。
まぁ、タダ酒飲めるし、アイツに近づかなけりゃいいや。

夜も深くなり、飲み会は開始された。


「んじゃ、みんな華さんの入隊を祝してカンパーイ!!」


近藤さんの挨拶が終わり、飲み会が始まった。
真選組唯一の女との事もあり、あいつの周りは隊士どもがうじゃうじゃしてやがる。
鼻の下伸ばしやがって、みっともねェ。
イライラが募り、酒が進む。


「沖田隊長…今日はかなり飲みますね」

「ザキ…もう一本とって来い」

「え?飲みすぎですってば!!副長に怒られるのはオレなんですから…」

「土方のヤローに怒られるのと今ここでオレに斬り殺されるのと、どっちがいい?」

「と、と、っとってきますー!!」


さっさと行けばいいんでィ。


「おい、総悟。お前もう部屋に戻れ」

「なんですかィ?これから本腰入れて飲もうと思ってたのに」

「飲みすぎだ。明日も仕事なんだからもう寝ろ」

「大丈夫ですぜィ。サボリやすんで」

「サボる宣言してんじゃねーよ!!…っち。おい、華。総悟を部屋に送ってくれねーか」

「わ、私ですか?」


ったく、めんどくせェー…。


「わかりやしたよ、寝りゃいいんでしょ?」


この場に居るのもかったりィし、オレは部屋へ戻ることにした。
…土方のヤローの言いなりになるのは気にわねーが。

部屋を出て自分の部屋へ戻ろうと歩き出したら、意外にもアイツが話しかけてきた。


「あの…沖田隊長。大丈夫ですか?」

「…あァ」

「今日は、ありがとうございました。わざわざ参加していただいて」

「別に…。ただ酒が飲めるっつーから参加しただけでさァ」

「そうですか。でも、参加してくれてうれしかったです」


なんでィ。可愛いことも言えるんじゃねーかィ。


「…アンタはオレの事が嫌いだろィ?」


何聞いてるんだオレは。
と思ったが、酒も入っているせいでオレの口はとまらねェ。


「アンタみたいな堅物まじめキャラは、土方さんとつるんでた方が楽しいだろィ?オレに構わず、接待してやって下せィ」

「あの…」


かなり、殺気をこめて言い放った言葉に、女は怯むことなく口を開く。


「誰が堅物まじめキャラだコノヤロー。上司だからって何言ってもいいと思ってんじゃねーぞ、クソガキ」


耳を疑った。
正直聞き間違えかと思った。


「おい、聞いてんですか?」

「あ…あァ」


今までにいないタイプだ。
仕事の時はクソみてーに真面目で…。なんですかィ?このギャップ。


「今は勤務外だから言わせてもらいますけどね。沖田隊長が私のことを嫌っているのは分かってます。だけど、仕事にまで影響させんじゃねーよ。お願いだから提出物の期限は守ってください!!」

「…」

「ん?沖田隊長…?」

「アンタ、面白い人ですねィ」


このオレにここまで言い切る女も珍しい。


「旦那が言ってた事も分かる気がしやした」

「旦那…?誰ですか、ソレ」

「アンタは、そのままの方がいいですぜィ。仕事中のアンタはロボットみたいでさァ」

「ロボット…!?」

「そうでさァ。仕事に真面目すぎて顔が強張ってばっかで、そんな人間らしー顔出来るならそっちの方がいいって言ってんでィ」「

「…隊長…、話し逸らしましたね」

「逸らしてねーやィ。そのままの華が書類取りに来るんだったら用意しとかねー事もねーですぜィ?」

「絶対…ですか?」

「んじゃ、オレ寝るんで」


人の話し聞け、このクソガキー!!という声が廊下に響く。
なんでィ。こんなにおもしろいヤツならオレの玩具にピッタリじゃねーか。
オレは胸のモヤモヤもなくなり、布団に入るとすんなり夢の中へと落ちた。



「沖田隊長。書類、早く提出してくださいよ」


目を開けると華の顔。


「なんでィ、母ちゃん今日は日曜日だぜィ?まったくおっちょこちょいなんだから」

「今日は火曜です!!」


いつものコイツなら、こんな突込みを入れてくることもなかっただろう。


「いいじゃないですかィ。昨日は夜も遅かったんだし、もうちょっと寝かせてくだせェ」

「ダメです。今日が期限のものはたっくさんあるんですよ?早く起きて取り掛かってもらわないと…!!」

「…いい事教えてやりまさァ。仕事ってのはたまには息抜きもひつようなんですぜィ?」

「隊長はいつも息抜きばっかでしょーが」

「アンタは息抜きしなさすぎなんでィ」


華の手を無理やり布団の中に引きずり込み、体をキャッチする。


「なにすんですかー!!!」

「オレも息抜きに協力してやりますぜィ」

「ちょっと!!それ、自分がサボるための口実じゃないですかー!!」

「今日のオレの仕事は華の添い寝に決定〜」

「沖田隊長!!!ふざけるのもいい加減に!!」


ガラっと襖の開く音が響く。


「おい、総悟!!お前いつまで寝て…ん…だ」


目の前の光景に顔が真っ赤になる土方。
なんでィ。いいとこだったのに。


「お前らナニしてんだァァアァァァーーーー!!!???」


この後、土方に説教された(まぁ、オレは全然聞いてなかったが)
説教の間、今度はどうやって華を困らせてやるかばっかり考えていた。
これからが、面白くなりそうでさァ。







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