ロミジュリ(後編)

HRで決まったバトロアロミジュリ。
1度もリハーサルや、練習をする事もなく本番が始まろうとしていた。
本番前の幕裏は殺気に溢れ、もはや演劇をする雰囲気ではない。


「んじゃ、みんな、死人だけは出さないよーに」

「ちょっと!!それ、演劇やろうとしてる生徒に言うセリフじゃないから!!」

「はーい。んじゃ幕開けっから、各自持ち場につけー」


持ち場って何処だよ!リハーサルすらやってねーだろっ!!と新八のツッコミが響いた後、ブーッと演劇の始まる音と共にアナウンスが入る。


『お待たせいたしました。3年Z組によります、バトロアロミジュリ開演いたします』


女生徒の声が止み、幕が上がった。
舞台の上にはジュリエットの姿をしたお妙の姿しかない。


「おぉ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」


イキナリ名シーンから始まり観客は度肝を抜かれる。
いや、度肝を抜かれるというよりは、え?そこから始まんの?といった驚きが大きいようだ。


『ジュリエットは、ある舞踏会に出席し、一目でロミオと恋に落ちました。彼女はバルコニーでロミオが来るのを、毎日待ち侘びているのです』


新八のナレーションに観客のどよめきもなくなる。だがそんなつかの間、似つかわしくない声が舞台に響く。


「どりゃぁー!!」


さっちゃんの不意打ちの蹴りにお妙は素早く避ける。


「フンッ、偽ジュリエットは黙ってなさい。私が本物のジュリエットよ!!」


イキナリの出来事にさすがのお妙も体制を崩す。


「おぉ、ロミオあなたはどうして先生なのぉおぉおぉぉお!!」


さっちゃんの叫びに観客は何のこっちゃと困り顔。


「先生と、生徒じゃなければ!!あんなコトや、そんなコトや、あ〜んなマニアックなコトも出来るのに!!」

「ドケヨ、偽ジュリエット!!ワタシガ本物のジュリエット!!アァロミオ!!私ノ純潔ヲ奪ッタンダカラ慰謝料1億円ヨコシヤガレ」

「ホワチャー!本編でもコッチの世界でも演劇でも私がヒロインアルー!!私がジュリエットじゃあぁあ!!」

「っていうか〜。前編私ィ出れてねぇしぃ〜。ジュリエットは、私しかいね〜だろっつーか〜」

「サブキャラは、黙ってろ!!!ジュリエットは、銀魂高校の女王。私のモノだぁあぁあ!!」


『多数現れたジュリエット。果たして本物のジュリエットは誰なのか!!それを知るのはロミオだけなのであった!!おっと!ハムエット選手お妙エットの蹴りで脱落寸前か!?』


新八のナレーション通りハム子はリングアウト。、舞台の上は、ロミオとジュリエットと言うよりは、バトルロワイアルそのものとなっていた。


「ちょっーと待った!!」


待ったの声に女達の手は止まる。
声の方向を見てみると提灯パンツに白タイツの近藤の姿があった。


「オレはロミオ。ジュリエットをさらいにきた」


静まる舞台。
観客達も近藤の姿に目が留まる。


「さぁ、ジュリエット。一緒に...」


お妙に手を差し出した瞬間。
ジュリエットー!!と叫び声が響く。


「ジュリエットー!僕が本物のロミオだ」


何処かの独眼竜の格好をした九兵衞が叫び、観客席からは黄色い声が上がる。


「ふふふ.....はーっはっははは」


奇妙な笑い声と共に今度はアルセーヌルパン姿の桂が舞台に降り立った。


「ジュリエット〜、お前を盗んでやるぞ〜はーっはっはっはっは」


舞台は、収集のつかない状況が続いている。
その頃、舞台裏では...


「おい、華収集つかなくなってんぞ」

「そうでィ。お前が舞台に立てば収まりまさァ」

「いやいや。今更ジュリエット増えたら余計収集つかないでしょ」

「そうだ。お前は舞台に出るな。ここにいろ」


土方が必死で説得するが、般若のように恐ろしい顔になっていたため、華は、一歩後ろに足を引いた。


「お兄ちゃん...怖い」

「華が舞台に立たねぇと話が進みやせんぜィ?」

「.....ったく、しゃーねぇなぁ」


銀八は、ボリボリとあたまを掻きながら華に近づく。


「華?これから、沖田も土方も舞台に出て、先生と暗い幕の裏で2人っきりになるんだぜ?何が起こるか...保証しねーからな」


肩をくまれ、冷や汗をかく。
顔が教師ではなく変態の顔になっている銀八にドン引きする。
ニヤニヤ笑う銀八は華にとって恐怖でしかない。


「おぉ、ロミオ。貴方はどうしてロミオなの?」


銀八の一言で、華は、舞台に立ちお決まりのセリフを言ってのけた。
舞台裏にいるより、舞台の上にいた方が安全だと本能が促したからだ。


「ははは!!華!!ロミ男がお前を盗んでや〜る〜」

「あ〜れ〜!お助け〜!!」


観客はもはや、え?これ時代劇?シェイクスピアじゃねーだろっと首をかしげだす。


「待ちやがれィ!」


沖田の声にまたもや舞台は静まる。
沖田は華の手を取り、逢いたかったぜィジュリエット。と囁く。


「待てコラァ!!!!」


ここで、土方ロミオが登場となった。
華を沖田から引き離し、オレがロミオだぁあぁぁ!!と叫ぶ。
3-Zのクラスメイトからしたら、いつもの光景が始まった。と呆れれるが、他のクラスはそうではない。
銀魂高校の王子様と呼ばれる沖田と、クールビューティ土方が、1人の女を取り合う姿に、女子達は黄色い声をあげまくった。
華の立場を自分に置き換え劇を見出すツワモノ達からすると、キュンキュンする。
いや、キュンキュンしまくれる状況なのだ。


「ロ、ロミオ、、、様?」


『さぁ〜てここで問題でーす。本物のロミオとジュリエットは誰でしょう?みんな、手元の番号札を上げてね〜』


ナレーションの声は新八ではなく、銀八に変わっていた。
なぜか観客に渡されていた番号札が次々と上がる。


多く上げられた札は、ジュリエットの一番(お妙)、二番(さっちゃん)、五番(華)と、ロミオの二番(九兵衞)、四番(土方)、五番(沖田)。
となった。


『はーい。該当しないヤツさっさと撤収〜!!』


選ばれなかったもの達は、文句を言いながらも屁怒絽の手により、強制退場させられる事となった。
舞台の上にはジュリエット3人と、ロミオ3人。
シンと静まる舞台の上で、お妙が口を開く。


「困ったわ...。ロミオとジュリエットって、この先どうすればいいのかしら...?」

「甘いわねぇ、お妙さん。この後はロミオ(先生)とジュリエット(私)の濡れ場に決まって


セリフを言い終わる前に小道具がさっちゃんの頭に命中した。
もちろん、小道具は銀八が投げモノだ。


「えっ、えっと...来てくれたのね、ロミオ様。私は貴方の事を待ち焦がれておりました」

「悪いが、僕は君をジュリエットとは認めない!ジュリエットは、いや、おたエットが本物のヒロインなんだ!」


日頃、華に優しい九兵衞だがお妙の事になると周りが見えなくなるようで、必死にロミオを演じきる。


「知ってやすかィ?ロミオとジュリエットって最終的にジュリエットは死ぬ運命なんですぜィ」


沖田の一言にフリーズする九兵衞。
お妙の顔を見て、切なそうに手を取る。


「もぉ、我慢出来ん!!ジュリエット!!いや、お妙さん!こうなったら僕と駆け落ちしましょう!!」

「妙ちゃんと駆け落ちするのはこの僕だぁあぁ!!」


お妙の手を引き走り出す九兵衞。
その後を近藤が追いかけ、結局舞台には華、土方、沖田の三人となってしまった。


「ジュリエット。やっと2人っきりになれやしたねィ」

「おい、待てコラァ!!何処が2人っきり!?オレもいるだろーが」

「邪魔するんじゃねーよ。ヒジオ」

「ヒジオって何だよっ!!オレがヒジオならなぁ、、テメェーはオキオだコラ!!」


『ヒジオと、オキオは犬猿の仲。ジュリエットを落とすのは果たしてどちらのロミオだぁあ!!』


ナレーションが新八に戻り、沖田と、土方は睨み合いを続けている。
張り詰めた空気に、観客達も息を呑む。


「ヒジオ、オレはアンタの事忘れやせんぜィ」

「お、おい、ちょっと待て総悟!?コレは本編じゃねーのに...」


土方に向け、バズーカを構える沖田。


「あばよ」


沖田の一言で、バズーカの引き金は引かれた。
大きな爆音とともに、土方はクシャクシャになった。


「邪魔者はいなくなりやした。さァ、ジュリエット。どう可愛がってやりやしょうかねぇ?」


ニヒルに笑う沖田に後ずさりする華。


「おっと、逃がしやせんぜィ」


華に沖田が抱きつき、観客は静まり返る。
土方は、まだ動けないようで「総悟やめろー!」という声だけが響く。


「オレは、バットエンドは好きじゃねェんでさァ。このままちゅうしてハッピーエンドで終わりやしょう」


セリフを言い放った後、女子達の黄色い声が響き渡る。


「...ジュリエット.....」

「ロッ...ロミオさま.....」


見つめ合う2人にまた会場は静まる。
3-Zのメンバーも2人に釘付けになっている。


「...分かりました。ロミオ様、キスして演目を終えましょう」

「馬鹿華!!何言ってやがる!」


土方の声も虚しく、沖田の頬を両手で掴み顔を近づける華。
2人の唇が重なりあった所で、幕が下がり観客席の方からは、拍手喝采が起こった。


「華!!」


キスの衝撃に土方は立ち上がり2人の方向へと走る。


「どぉ?名演だったでしょ?」

「......」


無言の沖田。土方が顔を覗くと、沖田の唇にはガムテープが貼られていた。


「...ガムテープ...」


キスがガムテープ越しだと知り、安堵の表情を浮かべる土方。
それとは反対に沖田は、不満そうにガムテープを剥がす。


「総悟?怒ってる?」

「...そりゃ、怒りやすぜィ。ガムテープ越しとは思ってなかったんで」

「そっか...。ガムテープ無しですればよかったね」


華のセリフに土方と、沖田は固まる。


「冗談だってば、冗談」


ケラケラ笑う華。沖田はすばやく行動に出た。
手を引き、華の身体を引き寄せたと思ったらチュッとリップ音が舞台に響く。

唖然とする、華と土方。


「今はこれで我慢しときやす」


何が起こったのか理解し、華は顔が真っ赤になり、土方は沖田の後を追う。


「待ちやがれ総悟!!!テメーは、士道不覚悟で切腹だぁあぁあぁ!!!」

「土方さん、ここは本編じゃありやせんぜィ」


走って逃げる沖田を追いかける土方。
赤くなり固まる華を見て銀八は一言言い放った。


「青春だねぇ」

「えっ!?閉めかたすごく雑じゃないですか!?」

「いーんだよ、ここで終わっとこうぜ、ぱっつぁん」





おまけ
演劇コンクールの結果。
「3年Z組  優勝」
とはなりましたが、賞金は沖田が破壊した舞台の修理費に当てられる事となりました。



終わり方微妙\(^q^)/

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