ロミジュリ(前編)

3年Z組。
いつもざわつている教室ではあるが、今日は、いつにも増して騒がしかった。



「ヒロインは、私にしか出来ないネ!!」

「ウルセェンダヨ!!ガキニコノ役ガコナセルワケネーダロ!!」

「そうよ、神楽ちゃんにジュリエットはまだ早いわ」

「ジュリエットは、私。ロミオは先生。もうこれ以上話し合う必要はないわね」

「ちょっと待ってくれ猿飛。お妙ちゃんがジュリエット、ロミオは僕が演じた方がいいと思うんだが」

「いや待て!!女の子同士でロミオとジュリエットなんて不謹慎だ!ここは、いっその事、ゴリオとお妙さんで行くしかないと思う!!」

「演目を不快なものに変えるのはやめてもらえます?虐殺しますよ?」

「お〜い、どうでもいいから早く決めてくんねーか。帰れねーんだけど」


演劇コンクールでの配役決めをしているのだが、なかなか決まらず時間だけが過ぎていった。
女子達はジュリエットというヒロイン役をどうしても演じたいらしく話しが一向にまとまらない。
このクラスに譲り合いや、妥協なんて言葉は存在するはずもなく、決まる様子は伺えないままだ。


「じゃあよ〜、先にロミオから決めたらどうだ?」


銀八の問いかけに、女子達は一旦黙り込み、沖田が口を開いた。


「旦那〜。ロミオは土方さんがいいと思いま〜す」

「なんで、オレがそんなチャラチャラした役しなきゃいけねーんだよ!!」

「んじゃ、ロミオは土方君で決まりっつーコトで」

「勝手に決めてんじゃねー!!」

「待て!その、ロミ男とやら…オレが引き受けよう」

「ヅラ、お前は黙ってろ。ロミ男っていってる時点で、お前には任せられねーよ」


ロミオを決めようとしてもきまらず、グダグダした時が流れる。


「先生、もうロミオとジュリエットっていう演目から変えた方がいいような気がしてきたんですけどー」

「ぱっつぁん。やっと喋り出したと思えばくだらねーコト言いやがって。ここでまた演目変えたら変えたでコイツらゴチャゴチャ言いだすに決まってんだろーが」

「じゃあ、どおすんスか。この討論そろそろ死人が出てもおかしくないと思いますよ」


教室では、痺れを切らしたお妙が近藤を殴りだし、神楽とキャサリンが掴み合いを始め、さっちゃんと九兵衛が口論になり、沖田は、土方にいつもの様にちょっかいを出しと、収集がつかなくなっていた。


「なんかこう、ヒロインとか主役とかがない演目...もういっその事ストーリーから作るとか」

「ストーリー作るっつったてよ、今から脚本書いても間に合わねーだろ」

「まぁ、そうですよね。全員が主役みたいな脚本、書けそうにもないですしね」


新八のつぶやきに、銀八がニヤリと笑った。
何か閃いたようで、全員を席に座らせ黒板に注目させる。
銀八が黒板に書いた文字は「バトロアロミジュリ」の文字。
バトロアっておかしいでしょ!!とツッコミを入れる新八の声が教室に響いた。


「こうなったら、舞台の上で決着つけるしかねぇ。台本はナシ。全員アドリブのみの芝居とする」

「面白いじゃない。実力でジュリエットを奪い取ればいいのね」


お妙は指をボキボキ鳴らしながら微笑む。


「お妙さん、本物のジュリエットが誰なのか本物のヒロインが誰なのかを舞台の上で教えてあげるわ」


納豆を混ぜながら、お妙にガンを飛ばすさっちゃん。

「本物のヒロインは、私ネ!!実力見せてやるから覚悟しろヨ」


本編のヒロインとは思えないほどキャサリンを睨みつける神楽。

「オトナノ色気デ、ヒロインノザハモライマース」


セーラー服をみだしながら色気を出そうとする(男子達はドン引きだ)キャサリン。


女子達は、銀八の意見に気合いが入ったようで火花を散らす。


「先生!バトロアって言ってもロミオ演じたがってるの近藤さんと、九兵衛さんと、桂さんくらいですよ?」

「ここで、オレの秘策だ。おい、華。大切なHRの時間に寝やがって、起きろ」

「まさか...銀八テメェー」


土方の瞳孔がいつもより開き、銀八はニヤリと笑う。


「んっ....先生...おはようございます」

「おはようじゃねーよ。お前寝てた罰な、学芸会でジュリエット参戦すること」

「銀八!!テメェーきたねぇぞ!!」

「旦那〜やってくれやすね。華が参戦するっつーコトならオレも参加しやすぜィ」

「総悟テメっ...オレもだ!オレも参加する!!」


銀八は、目論見通りに事が進み満足気な顔でHRを終了した。
きり〜つ、れい。と神楽の気の抜けた号令で各々、帰り支度を始める。


「あ、そうだ。ロミオとジュリエットのストーリーは頭に入れとけよ。後、キスまではギリッギリ許すがそれ以上の事はしないよーに」


銀八の最後の言葉に土方は固まる。
そんな危険な中に華を参戦させる。しかも、沖田は本気で唇を奪いに行くはず。
土方の頭の中は、可愛い妹をあの魔王からどうやって救うかという事しかなかった。


「お兄ちゃん、どうしたの?早く帰ろう」


華の声に我にかえり、おう、と小さな返事を返す。
あんなに煩さかったHR中に寝れるようなマイペースな妹だ。油断したら、沖田になにをされるか分かったものではない。コイツを護る事ができるだろうかと、土方の不安は増すばかりだった。

[ 3/9 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -