13

今は何時ぐらいなんだろうか。この部屋には、窓がないから良く分からない。しかし、日は暮れているはずだ。
囚われの身、というのも暇なものだ。よく、フィクションのなかで捕らわれのお姫様とかが出てくるが、つまらなくはないのだろうか。というか、僕だったら隙を見て逃げ出したくなる。守られるより、守るほうが、性に合っていると思うのだ。

湊はなるべく、体力を温存しようと床に座り込んでじっとしているが、アシュリーは忙しなく歩き回っている。湊が吐血したのと、捕らわれていることから動いていないと気がすまないのだろう。

その時だった、外からがらがらと何かが上がる音がした。確か、この部屋の外の廊下には鉄格子があったような気がする。それが上がる音だとは思うのだが…。もしかして、レオンが助けに来てくれたのだろうか。

「何の音かしら…?」
「うーん、多分だけど…外の鉄格子が上がった音だと思う」
「助けが来たの!?」
「ちょ、アシュリー! 敵だったらどうするの!?」

そういって、ドアに駆け寄るアシュリーに湊は慌てて止めた。レオンかも知れないけど、レオンじゃなかった時を考えるとドアに駆け寄るのは良くない。いきなり掴まれたりして、アシュリーのトラウマを作るのも可哀想だ。


アシュリーはぴたっと止まれば、湊のところに戻ってきた。湊も立ち上がって警戒する。ドアを開けて入ってきたのは、やっぱりレオンだった。

「レオン!」

湊がレオンに駆け寄り、レオンに会えた嬉しさで思わず胸に飛び込んでいた。レオンも、湊が抱きついたので両手を回して子供をあやす様に背中をぽんぽんと叩いた。

「ミナト! 大丈夫だったか?」
「うん。平気だよ」

本当は怖かった、でも弱音は言っちゃいけない。だって、一度弱音を吐いてしまったら躓いてしまいそうだから。こんなところで、躓いてたら生きてなんて帰れない。

「こほん、ミナト? で、彼がレオンなの?」

アシュリーが咳払いをする。湊ははっとし、慌ててレオンから距離をとる。その顔は少し赤くなっている。思わず、抱きついてしまったがよく考えれば、恥ずかしすぎる。でも、アメリカでは普通なのだろう。レオンは、急に離れた湊に疑問符を浮かべていた。

「え、う、うん! レオンだよ!」
「アシュリーか? 大統領の命で君を助けに来た」

肯定する湊にアシュリーはこっそり耳打ちをした。「彼、イケメンね。ミナトが惚れるのも分かるわ」え、ちょ。あ、アシュリーさん何を言って!? 一気に顔の熱が上がりそうだ。じゃなくて、絶対に上がってると思う。

「とりあえず、ここから出よう」

二人して頷く。さっさとこんなところから逃げたい。でも、これから先のことを知っているとなると、少し気が滅入る。道は長いからだ。
そういえば、脱出できたとしても自分の戸籍はあるのだろうか、と心配になった湊だった。


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