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レオンに無線から連絡が入った。確か、救出に成功したとかそんな感じのことを言っていたと思う。レオンが通信している間に、アシュリーは湊の脇腹をつつき、そっと耳打ちをした。

「彼、いい人ね」
「え? あ、うん。レオンはいい人だよ」

アシュリーの質問の意図がよく分からないが、頷いておく。レオンはいい人だよ。身元がよく分からない、怪しい自分を助けてくれるし。今更だけど、記憶喪失設定なんだよな。……ボロ出さないようにしないと。


廊下を歩いていれば、1階に下りるための梯子があった。1階の安全を確保するために、レオンが先に飛び降りる。毎回思うんだけど、何でちゃんと梯子を降りないんだろう。足、痛くならないのかな。

「大丈夫だ。アシュリー、受け止めるから降りてくれ」
「えっ! 分かったわ」

アシュリーも一瞬は驚いたようだが、飛び降りた。レオンに受け止められて「きゃっ」と短い悲鳴を上げる。ちゃんと受け止めてもらえるって言っても、怖いものは怖いよね。

「ミナト、お前も早く来い」
「うん。じゃあ、レオン危ないからちょっとどいて」
「は? い、いや……ミナトも受け止めてやるから」

「えっ!? い、良いよ! 僕、重いし!」
「大丈夫だ」

まっすぐ見上げてくるレオンに、湊は折れたようで眼をつぶり、少し躊躇しながらも飛び降りた。少しの浮遊感の後に、受け止められる衝撃が加わる。恐る恐る眼をあけてみれば、目の前にはレオンの顔がある。

「っ!」

不意にドキリとしたのは内緒だ。バクバクと心臓が高鳴っているのが分かる。頬に熱が集まるのを感じながらも、レオンと眼を離せずにいた。

「大丈夫だったろ?」
「う、うん」

軽く頷けば、レオンは口角をあげて笑みを作り、湊を下ろした。ふと、アシュリーに視線を向ければいい笑顔を浮かべてグーサインをしている。何なんだよ、もう……。

梯子を降りてすぐの礼拝堂を抜けて、教会から出ようとしたときだった。


「その娘を返して貰おうか」

すぐさま、レオンは振り向き「誰だ?」とその人物に問いかけた。まぁ、人物っていってもサドラーなのだが。湊の視線に気づいたのか、サドラーは湊を一瞥し口元に笑みを浮かべれば名乗りを上げた。

「私は、オズムンド・サドラー。この教団のカリスマ」
「目的は何だ?」
「我が力を世に示す為だ。アメリカは宣伝するのにちょうどいい。その大統領の娘を拉致し、我らの力を与え――そして返す」

自分からカリスマって言うのって可笑しい気もするが、あえて触れないでおこう。
そんな考えをしている湊をよそに話は進んでいき、アシュリーが首に触れながら「まさか…」と呟けばレオンに向かって「レオン、首に何かされたわ」と言った。


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