12

捕まってから1時間ほどが経過した。体感的にはもっとかかっているような気がするが、実際はそんなものだろう。アシュリーとは他愛無い話をして時間をつぶした。とりあえずは、ここにいるうちは、ガナードたちも手出しは出来ないだろう。ちょっとは安全だと思う。

レオンが助けにくるのは、夜だと思う。だから、最低でもあと数時間で助けにくるはずだ。


そう考えると、眠くなってきた。睡魔は、抗えば抗うほど眠くなってくるものだ。いや、本当にやばい。
かくん、かくんと舟をこいでいたらアシュリーに声をかけられた。


「ミナト…眠そうね。大丈夫?」
「うう、大丈夫じゃないかも……凄く、眠い…」

眼がしぱしぱとするので擦る。本当に何でこんなに眠いんだろうか。まさかとは思うけど、プラーガのせいじゃないよね…。

「少し休む?」

アシュリーが聞いてきたので、湊はこくりと頷いた。膝を抱えて、体育座りのような格好になる腕を枕にして、眼をつぶった。ちょっと体勢はきついけど、横になるよりはましだと思う。横に寝ていたら、いざというときすぐに起きれない。


なんて、考えていたら。いつの間にか意識は途絶えていた。



暗闇の中、自分だけがぽつりと立っていた。周りは真っ暗で何も見えないのに自分の姿だけはくっきりと映っている。体の中で何かが蠢いているような感覚に胸がむかむかとする。気持ち悪い、気持ち悪い。ぐるぐると視界が回って、呼吸が出来なくなった。助けを求めようとも、声が出ない。蠢いているのは、何だ。


ふっと、そこで眼が覚めた。心臓はばくばくと激しく鼓動しているし、冷や汗も半端なかった。夢か、と少し安心するも不意に体に激痛が走った。

「――っ!? げほっ、うぇっ!?」

体が強張った。なんだ、これ。体から、何かがこみ上げてくるのを感じ咳き込めば手には血が付いていて驚いて変な声が出た。アシュリーなんて吃驚していて固まっている。

あれ、もしかしてこれってプラーガが孵化したんじゃね…?

「ミナト!? 大丈夫なの!?」

慌てているアシュリーに湊は笑って大丈夫だと答える。でも、このままシナリオ通りに進めば、プラーガは除去出来るけど進まなかったら…? そう考えると、怖くて体が震えそうだ。もし、完全に乗っ取られてしまったらそのときは…。

手をその辺にあった布で拭い、レオンが助けにくるまで待つ。大丈夫だと自分に言い聞かせながら膝を抱えて待った。レオンが来るまで、もう少し――。


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