「新年の挨拶を噛んだやつは、罰ゲームって決めてたよな。」

桜川先輩が、カウンター席の俺の隣にきて鋭い視線で睨んでくる。

「え？俺、そんなこと聞いてないけど…。」

桜川先輩、今でも怖いけど、これくらいで、怯んでたまるか。


「ああ、そうそう、罰ゲームは決まりだよ。」

みっきーが、カウンターの中から身を乗り出して俺に向かって指をさす。

「えー、なんでだよぉ。」

マジでそんな話、してたっけ？

「逃げるのナシだぞ、直。」壁際に置いてある椅子から立ち上がって、啓太も俺に指をさす。

「ひ…人に向かって、指さしたら、いけないんだぞ！」

なんだよ…皆して、俺を落としいれようとしてんじゃねーの？

でもきっと、透さんだけは、俺の味方してくれるんだ。

俺は、隣に座ってる透さんの方に身体ごと向いて、上目遣いで視線を合わせた。

――よしっ、さっき欠伸したばかりだから、目も程よくうるうるしてるし！

「直くん、駄目だよ。約束したことは、ちゃんと守らないとね。」

「えーーーっ！？」

なんで？なんで？いつも俺のこと、守ってくれる透さんなのに。

優しいんだけど…うん、いつもと同じで優しい瞳で、俺を見詰めて、優しく囁いてくれるんだけど…、

「…直くん、ちゃんとここで、見ててあげるから。約束は守らなきゃ、ね。」

「はーい。」って、思わず返事しちゃったけど…

って…、えーーー？？？！

なんで？どうして、そうなるの？何、返事しちゃってんの？俺。

「んじゃ、一番は俺な。これで勝負するんだ。」

なんか、ワケ分かんないんだけど、桜川先輩が、羽子板出してきたんだけど…。

「…は、羽根突きで勝負ですか？」

「そうだ。文句あるか？」


――ふっ、ふっ、ふっ…。


羽根突きで勝負と訊いて、思わず不敵な笑いを浮かべてしまう俺。


――俺の勝ちだ、桜川先輩。


羽根突きなら、子供の頃から負けた事ないんだぜ？


「文句なんて、ないですよ。ふっ…」


――あれ？ところで、なんか罰ゲームが『勝負』に変わってないか？


…ま、いっか…俺にとっては好都合だしな。


店内のテーブルや椅子を隅に寄せて、ホールの中央で桜川先輩と向かい合う。


去年のサークルでの新年会でのこと、忘れてなんかいないんだぜ。


今日、やっとあの時の屈辱が晴らせるんだ。


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