出逢えた幸せss | ナノ

■ 2014/お正月SS(1)―Feliz año nuevo!

「シンコ(5)!

クワトロ(4)!

トレス(3)!

ドス(2)!

ウノ(1)!!」


フェリースアニョスヌエボ〜!!」

皆でクラッカーを鳴らし、声を揃えて言いにくいスペイン語で新年の祝う。

そして皆、いっせいに、瓶の中へライムを搾り落として、コロナビールをラッパ飲みする。


「だれだー?今、噛んだやつは?!直か?」

と、一気に瓶の半分まで飲み干したみっきーが言う。

「直に決まってる。」と、桜川先輩。

「直しかいねえ。」と、啓太。

「直くんでしたね。」と、森岡さん。


「え?俺?違うよ!俺じゃないってば。ね、ねえ、透さん?」

俺は、隣にいる最愛の恋人に助けを求めた。

「え?いや、直くんでしょ?」

なのに透さんは、微笑みながら、俺を見詰めて、優しい声で俺を突き放す。

「と、透さんまで!」


「「「「やっぱりねー。」」」」

透さんと俺以外の声が、まるで合図でもしたかのように、ぴったりとハモる。

「な、何が¨やっぱり¨だよ!!大体さー、ここは日本なの!スペイン語なんて、話せなくていいの!」

――まったく…、

昨年の春に、メキシコの友達の店を手伝いに行ったみっきーは、すっかりメキシコかぶれ。
だけどさ、やっぱり日本の正月は、

 明けましておめでとう!

だろ?ね?そう思わない?

それなのに、みんなにスペイン語で言わせるなんて、ほんっと、いつも、みっきールールなんだから。

「何言ってんの、ここは俺の店なんだよ?だから俺がルールなの。」

「えらそーだなー、みっき。」

俺はちょっぴり拗ねて、カウンターに肘をついて、コロナビールをグビグビと呑んだ。

そう、ここは『BAR awesome!』みっきーの店。

大晦日からここに集まって、ワイワイ騒いでたんだ。

床は落としたナッツの殻でいっぱいで、歩くとガシガシ踏みつけてしまうくらい。

みんなもう適度に酔っていて、俺もなんだかほろ酔いかげん。

「直くん、そんなに一気に呑んじゃ駄目だよ。」

今日ここに集まったメンバーの中で、早生まれな俺だけがまだ10代で、

啓太なんて、とっくに二十歳になってる。

いつも、なんとなく保護者みたいに透さんは、俺がアルコールを呑むのを心配するんだ。

「だいじょーぶだよ。ビールだもん。これくらいで酔わないよ。」

ほら、ちゃんと呂律だって回ってる。だからそんなに心配しなくってもいいのにさ。

ちょっとだけ…顔が熱い、ような気がするだけで、意識だってほら、しっかりしてるし。




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