「いや、だから……その、あの……だ、だめなものはだめなの!」

 思いつかなかったのか、翔太がむりやり話を切り上げてしまった。

 僕はそれに対してまた目を瞬かせる。

 だって、その答えは、男同士を別に否定しているわけじゃないように思える。
 翔太はただ認められないだけなのかな?

 僕が一人で納得していると、なにかを思い出したような顔をした翔太がいきなり僕の机につっぷしてしまった。

 どうしたんだろう?

 きょとんとして翔太を見るけど、気づいた様子はない。うー、とか、あー、とかなんかうなり始めたけど、大丈夫?

「……翔太、大丈夫?」

 僕の問いかけに、翔太が少しだけ顔を上げた。

「……そういえば、あの人昼休み迎えに来るって言ってた」

「昼休み?」

 昼休みといえば次の授業が終わったすぐあと。

 ……ただ迎えに来るって言ってるだけなのに、どうしてそんな顔してるんだろう。

 僕がなにを考えているのか感づいたのか翔太が眉根を下げて、まるで迷子の子犬のような顔をして言った。

「昼休みと言えば昼食でしょ? ……一緒に食べるんだって」

「? お昼一緒? なにがだめなの」

「……ただでさえ怖いのに、先輩と食べるの屋上でだよ? 不良の巣窟だよ? 俺死ぬかも」

 不良の巣窟とやらに行っただけで死ぬという翔太の言葉に僕はとても驚いた。そんな恐ろしい場所が、校内に存在しているなんて僕は知らない。

 びっくりして目を見開いている僕に気づかないのか、翔太がなにかを閃いた! って顔で目をきらきらさせて、身体を机から起こした。

「そうだ! 雪兎も一緒に行こうよ! ね、お願いっ」

 顔の前で手を合わせてぎゅって目を閉じた翔太が言う。

 僕も、行くの? そう思ったけど、やっぱり友達のことをむげにはできなくて。

 僕はこくりと頷いた。

 あのきらきらした人と出会ったのは、その日……その屋上で、だった。

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