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翔太が言っていた通り昼休憩に教室に来た柊先輩からの了承を得て、やってきたのは屋上。
屋上に入るのなんて初めてだから、きょろきょろと辺りを見渡してしまう。空が一面に広がっていてすごくきれいだ。
空が近いって多分こんな感じ。
物珍しそうにしていたのは僕だけじゃなくて、翔太も同じような顔をしていたみたい。柊先輩がなんだかいとおしそうな顔をして翔太を見ていた。
「……」
それにしても、屋上のどこを見渡しても自分たち以外いない気がする。翔太が言っていた不良なんて柊先輩だけだ。
翔太もそのことに気づいたのか不思議そうに辺りを見ている。
「ああ……他のやつらは全員追い出したからいねえよ。安心しろ」
「え!? あ、は、はい……その、ありがとう、ございます」
ほっとする翔太と、その様子を穏やかな表情で見ている先輩。
すごくお似合いだと思うのは僕だけかなあ?
「……ご飯、食べないんですか?」
その雰囲気を壊すのもどうかと思ったけれど、昼休憩だっていつまでもあるわけじゃない。
「そうだな……翔太、こっち」
「え? あ、はいっ」
「……」
僕の言葉に納得したように静かに頷いた柊先輩が、翔太の手を軽く引く。
先輩に引っ張られる翔太の後ろを僕はゆっくりとついていった。
いよいよご飯、ってところで、翔太がもじもじして言った。
「……あ、あの……先輩」
「あ? なんだ」
「こ、この体勢は……」
「いいだろ、別に」
柊先輩の胡坐をかいた足の上に座らせられた翔太の状態。翔太の顔はすごく真っ赤になっていて、先輩はすごくやわらかい表情をしている。
必死に抵抗しているんだろうけど、翔太は身体が大きいわけじゃないし、先輩は多分平均なんて軽く超えるくらいの体格だ。かなうはずがない。
「おとなしくしてろ」
「ぅ……はい」
「……」
無自覚に甘いってこういうことだ。だって先生たちもよくしてる。
ひよくんも言ってたし。こういうのを無自覚なバカップルっていうんだよ、って。
でもさっきまであんなに先輩のことを怖がってたのに、もうあんまり怖くないみたいだしよかった。……先輩もなんだかやさしい人みたいだし。
あんなに甘い雰囲気を出されたら無理もないかもしれないけど。
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