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僕、宇佐雪兎が通うのは藍憧学園という男子校だ。
男子校ということもあり、同性愛が横行しているけど、僕自身同性愛に偏見はないし、なにより僕はなにもかもが平均的。あまり関係ないと思っていた。
その日、入学以来の友人である翔太が呼び出され、びっくりするくらい青ざめて帰ってくるまでは。
「俺、告白された!」
その言葉に僕はただぱちぱちと目を瞬かせた。
告白なんて別にいいと思うけど、なんでそんなに真っ青なんだろう?
無言で首を傾げる僕に翔太は言いつのる。
「こ、告白してきたの……柊辰巳なんだよ! あの柊辰巳!」
「……ひいらぎ、たつみ……? だれ?」
聞いたことない。そんな人。
僕の言葉に驚いたのか、翔太が目を見開いた。そんな顔されたら、なんだか自分が悪いことをしたみたいに思えてくる。
「知らないの!? ありえない! 学校一の不良なんだよっ!?」
「知らない……ごめんね?」
「え、あ、いや……別に謝らなくても」
「……翔太は、その不良さんに告白されたの?」
気まずそうに視線を逸らした翔太に、僕はさりげなく話題を逸らした。だって、そんなしょんぼりした翔太の顔はなんだか子犬をいじめているみたいだったから。
僕の言葉に自分がなんでそんなに青くなっていたのか思い出した翔太が、また顔を青ざめさせて僕に詰め寄った。
「そ、そう! どうしようっ!」
なんでそんなに焦ってるんだろう?
わからなくて首をかしげている僕とは対照的に、翔太はなんだか一人で盛り上がっている。
「っていうか、なんで俺みたいな平凡に? やっぱり罰ゲームとか? ……うん。そうだよね。だって、そもそも俺も先輩も男だし」
「? 男同士、だめ?」
「え? そ、そりゃそうでしょ」
「なんで? なんで、だめ?」
わからなくて、翔太のことを見つめた。
翔太には男同士がだめな理由があるの? 僕は別に男同士にこだわりはないよ?
大切な人に、そういう人いるから。
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