矛盾と後悔


 部屋に帰ってきてからすぐに、僕らは寮内にある食堂へと向かった。

 いつもならもっとゆっくりしてから行くんだけど、今日は図書室に残り過ぎてたから、今行けば丁度いい時間になるはず。

 その頃にはさすがに椿も編入生については語っていない。というのも、僕があんまり理解してないのに気づいて、語るのをやめてくれたんだ。

 こういう気遣いができるってすごいと思う。
 僕が椿の言ってることを理解できればよかったのに、ごめんね。

 もうしわけなく思ってる僕に、椿はちょっとだけ笑うと、「そういうちょっと勘違いしてる弱気な性格が海の可愛いところだよねえ」とわけのわからないことを言ったから、僕はもうしわけなく思ってるのも忘れて、また首を傾げてしまった。

 そんなふうにしていたら寮内だということもあり、食堂にはすぐについた。

 1年も通ってるからもう慣れたんだけど、最初はすごくびっくりした。

 だってすごく広いんだよ、この食堂。
 それに料理はすごくおいしい。

 僕と椿は食堂に入ると早速近くのテーブルに座り、テーブル一つ一つに設置してあるパネルを操作して料理を注文。

「海はなに食べる? 僕はそうだなぁ……カツ丼とチャーハンと焼きそば食べようかなぁ」

「……相変わらずすごいね」

 その小さな身体の一体どこにそんな量が入っていくんだろう。

 僕は苦笑しながら、自分の食べるものを考える。どうしよう。

「んー、じゃあ僕はオムライスにしようかな……ってどうしたの、椿?」

「う、ううん! なんでもないっ」

「そう?」

 首を傾げると、椿がまたテーブルの上に突っ伏して、「オムライスって……似合いすぎだよぉ」とぷるぷるし始めた。

 またなにか椿のつぼに入ったらしい。

 今日はいつもよりトリップする回数が多いなあ。

 僕はまた苦笑した。

「お待たせいたしました」

「あ、ありがとうございます」

「ありがとーございまーす」

 にっこりと笑って、料理を二人分運んできてくれたウェイターさんにお礼を言うと、ウェイターさんも笑い返してくれた。

 それを見ていた椿がまたにこにこ。

「ネコちゃん同士の戯れ、いいよぉ」

「ね、猫ちゃん……?」

「ふふふ、そーだよぉ」

 猫なんていたんだろうか。

 辺りを見渡すけど、やっぱり食堂に猫なんているはずもない。

 椿が見間違えたんじゃないのかなあ。

 そう思って椿を見るんだけど、椿は相変わらずにこにこしたままだ。

 これ以上追及しても仕方ないし、僕は椿を促して、料理に手をつけ始める。

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