3
ふうと一息つき、読み進めていた本にしおりを挟む。
ふと時間を確認すると、図書室を閉める時間はとっくに過ぎていた。
「椿、帰ろうよ」
カウンターで突っ伏してる……というか寝てる椿を揺すって起こす。
どうやら考え事をしている間に眠ってしまったらしい。
中々目を覚まさない椿を揺すり続けていると、やっと目が覚めたのか、むくりと起き上がって目を軽く擦っている。
「ふわぁ、おはよ。海……今何時?」
「もう6時前だよ。ね、早く帰ろう?」
「うん、いこぉ」
あくびをしながらイスから立ち上がった椿の後を追う。
まだ寝たりないみたいだけど、目はしっかり覚めているらしい椿は、足もしっかりとしている。
図書室を出て、寮までの廊下を歩きながら、僕は椿に思い出したことを問いかけた。
「そういえば、言ってたよね、編入生が来るって」
僕のその一言に眠気もなくなったのか、椿が一気に目を輝かせる。
そんな椿の様子に苦笑していると、椿が話しだした。
「うん! そうなんだ、来週だったかなあ。1年生に来るんだって!」
「1年生なんだ?」
「そうだよぉ。入学式から2ヶ月後っていうのが季節外れで期待できるよね」
にこにことし始めた椿。
……編入生かあ。どんな子なんだろう?
僕は編入生について語り続ける椿の声を聞きいて、まだ見ぬその子のことを考えた。
……でもきっと僕がその子と関ることなんてないと思う。
その子が図書室に来たりしない限りはね。
そのまま編入生のことを語り続ける椿の声に耳を傾けながら、僕たちは寮までの道のりを歩いた。
椿の話に相槌を打ちながらだと、結構早く寮に到着した。
着き次第僕らは自分たちの部屋へと向かう。
僕と椿は同室だから、部屋も一緒。
部屋についても語り続ける椿にはちょっとだけ呆れちゃったんだけど。
……というか、編入生くんが絶対ぼさぼさな鬘と年代物の眼鏡だって、なんでわかるんだろう。
不思議そうな顔をした僕に、「だって王道だから!」と言い放った椿に、僕はなにも返せなかった。
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