女と連れ立って歩くナマエを見付けて、クロコダイルの足が止まる。

女が胸を押し付けるようにナマエの腕に絡みつき、媚び売るように甘えている。それに満更でもないようなナマエの顔が目について、しかしクロコダイルはゆっくりと目を逸らした。

それがはていつだったか。

「ガキが出来たんだって」

頬杖を付きながら、ナマエが拗ねたように唇を尖らせて言った言葉にクロコダイルはちらりとナマエを見た。

いつも通りふてぶてしくソファーの脇を陣取った男は、まるで友人に愚痴るようにその言葉を続けた。

「で」

「結婚を迫られています」

その言葉に、クロコダイルはいつかのようにゆっくりと視線を逸らした。

その視線と入れ替わるようにクロコダイルを見上げたナマエが、その目で突き刺すようにクロコダイルを見つめた。

「だから、着いていけねぇわ、ごめんな」

旗揚げに誘ったのは、特に意味があった訳では無い。航海術を持っているし、そこそこ腕が立つ。いても邪魔にはならないだろうから。その程度だ。

そうか。素っ気なく返した言葉に、ナマエはどこか安堵したように肩を撫で下ろす。殺されるとでも思っていたのならそれはとんだ思い上がりだ。クロコダイルはナマエを歯牙にもかけていないというのに。

「じゃあ、頑張ってな。手配書でたら部屋に飾るからぁっだァ!!」

「失せろ」

二人して使い込んで薄汚れたソファーから腰を上げて、クロコダイルは振り返ることなく部屋を後にした。