「ニューゲート」

「来るんじゃねぇよアホンダラァ」

「拗ねるなよ」

「俺だってたまにゃァ拗ねることもあらァな」

「そこで素直なのが可愛いとこだよな」

ふん、といい歳したジジイが拗ねて可愛く見える俺の老眼も大概なのだろう。

勢いのまま押し倒したいところだが、押し倒せばさらにへそを曲げてしまうことは目に見えていて痛いほどの熱を宥めすかして堪える。

歳を食って落ち着いたのか枯れたのか、すっかりと誘発されることもなくなっていた体は久方ぶりの誘発に汗ばむほど熱いが、堪えられるようになったのは年の功だろうか。

「ニューゲート」

機嫌を伺いながら、そっと羽織られたコートの袖を引いた。

それにちろりと視線を向けたニューゲートは言うほど怒ってはいない様だが、それでもやはり拗ねている。俺だって、ニューゲートが誰かに誘発されて帰ってきたら仕方が無いとは思うが嫌だとも思うのだから仕方ないだろう。

振り払われない事をいいことに、袖を引いていた手を脇腹に滑らせればぴくりとニューゲートの腹が震えた。

「なァ、俺にはお前だけだよ」

「知ってらァ」

「拗ねてるお前も可愛いけど、笑ってる方がいいなァ」

「…………」

「機嫌直してくれよ、ニューゲート」

脇腹に潜り込ませた腕で強引に体を抱き寄せ、頬に唇を寄せると不満そうに眇られた目が俺を見下ろす。しかし数度頬に瞼に額にと唇を落とせばそれも飽きたのか、さほどかからずその顔は困ったように微笑んで見せた。その手が甘えるように首に回され、引き倒される体。

「ちぃっとばかり、困らせてみたかったんだが」

機嫌取りのうめぇ事、なんて見下ろした顔がいたずらな顔をして、少しだけ若い頃を思い出した。昔は互いが互いに嫉妬して喧嘩になることも多かったが、加齢とともにそれもすっかりとなくなってしまった。

たまにはいいな、こういうのも。

目尻のシワにキスを落とし、互いにかさついた指を絡ませて腰をすり寄せる。

「ジジイのくせにがっつくんじゃねぇよ」

「まだ若ェって事だろ」

「グララァ、そう言ってすぐへばるんだろうなァ」

ようやく機嫌の治ったニューゲートにもう一度子供みたいなキスを落として、鼻をこすり合わせるように笑いあう。年食った目の中で、同じだけ年食った男が昔と変わらずバカみたいな顔して笑っていた。