「ん〜、ヒゲがくすぐってぇよォ、ふふ、ちょいとォ〜」

「抱き心地いいんだもんよ、大人しくしてろって」

「困るねェ〜、わっしなんて固いだけだろォ〜?」

緩く身をよじらせるボルサリーノを背後から押さえ込むように抱きすくめれば、くつくつ喉を鳴らしながらボルサリーノはその目を細めて俺を仰ぎ見た。

「発情期は遠に終わったってェのに、何がそんなにいいのかねェ」

仕方の無い子供を見るような目をしながら、やはり擽ったいのか肩を揺すって顎を手のひらで柔らかく押し返す。その手のひらに唇を落とせば、いよいよこらえ切れなかったのかボルサリーノはぺちりと音を立てて俺の額を叩いた。

それに抱きつくことは諦め、代わりにじゃれつくように襲いかかれば唐突割って入る電伝虫の鳴き声。

渋々と二つの電伝虫が鎮座するサイドチェストを見やれば、ボルサリーノの電伝虫が嫌そうにぷるぷると鳴いていた。

緩慢な動作でもって俺の下から抜け出したボルサリーノが受話器をとると、電伝虫が申し訳なさそうに吐き出したのは上官の声だ。

「休暇中のところ悪いな、ボルサリーノ」

予定が変更になっただとか、部隊の編成がどうだとか、別部隊の俺にはあまり関係の無い話。それをベッドに寝そべって眺めていると、受話器に話しかけるボルサリーノがちらりと俺を見た。

上官と会話しながら、ついと伸ばされた手は犬でも撫でるように俺の頭を撫で、頬を撫で、唇に手のひらを押し当てて離す。

ちゅ、と音を立てて離れた手のひらを視線で追っていると、徐に手のひらを自身の口もとに運んだボルサリーノは、俺の唇が触れた部分をなぞる様に口付けてみせた。挑発するように細められた流し目が俺を見下ろし、発情期とはまた違う色気に思わずベッドに突っ伏すと頭上で笑う気配。

枕に顔を埋めて悶えているとそれ程間を置かずに通話は終わり、ベッドを軋ませたボルサリーノが俺をのぞき込んだ。

「あざといんだよてめぇ」

「だけど好きだろォ〜?」

「おう、めっちゃ好き」

襲っていいかと尋ねると、再びべちりと額を叩かれてしまった。