いっそ荒々しいと表現出来るほど、無骨に手繰り寄せられ唇を合わせた。がつりがつりと音を立てる歯すら気にしていないのか、まるで肉に食らいつくかのようにキスを貪るのは、らしいと言えばらしいだろうか。

「…なァ、何度も言うようだが、本当に俺でいいのか」

キスの合間、ちらりと覆いかぶさる顔を見上げて問えばその目は無感情にオレを写し込み、有無を言わせず再度合わせられる唇。

シャンディアの戦士は一人前となって初めて、番ないし伴侶を持つことを許される。番を選ぶのは大体にしてΩと女で、αとβの男が出来るのは意中の相手、より多くの子孫を残してくれそうな相手に日頃からアピールしておく事ぐらいだ。

一人前と認められる成人の儀の最終幕で、俺達は一生を添い遂げる相手を選ぶ。

独身の者達が集められ、意中の相手へと手を伸ばすのだ。

その最終幕が幕を開けたと同時に、俺は有無を言う暇さえなくワイパーに手を引かれてその場を去っていた。

おい、と驚きながら声をかけても、手を引き返しても待ったをかけても、ワイパーは迷うことなく俺を自身の幕屋へと引きずり込んでしまった。

足を払われ倒れ込むように座らされ、膝に伸し掛るワイパーはまるで射るように俺を見下ろし、口元に食らいつく。

「なぁ、おい」

「黙ってろ」

ぎろりとあの目で睨みつけて、ワイパーは俺の肩を押さえるように握りしめた。

「俺でいいのか」

そうして一度目のその問は、聞く耳すらなく黙殺されてしまった。

発情期ではないのだろう。噎せ返るようなあの匂いはしないけれど、ワイパーはがぶりがぶりと何度も俺に食らいつく。

熱い舌に舌を絡め、腰を支えるように回していた腕はいつの間にか体のラインをなぞる様に指先を這わす。初夜と言うには随分と即物的で、焦れったい程の時間をどれほど味わっただろうか。

顎を汚す唾液を舌で舐め取り、互いに上擦り始めた呼吸を重ねるようにその目を覗き込む。

「後戻り、出来ないぞ?」

濡れて艶を帯びた唇を食みながら告げた最後の忠告は、みっともなく掠れていたが。

「…取られたくねぇから、こうしてるんだろうが」

その言葉に、発情期に当てられたみたいにくらりとした。