「ナマエって、番がいるんだって?」

ようやく船に馴染み始めたエースが、不意に思い出したようにナマエに訪ねた。

わあわあと、組み手と銘打った力試しを眺めながら寛いでいたナマエが気だるげに視線を向けると、どうなんだよとエースが言いすがる。

「あー、それなぁ」

そう言いながら再びふいと視線を戻したナマエが、つまらなそうに唇を尖らせた。

「ウソなんだわ」

「へっ」

「ウソっていうか、勘違い?」

きょとりと目を丸くしたエースにナマエが苦笑して、ついでに少しだけ意外そうに俺を見た。

「あれ、マルコも信じてたクチ?」

「…あー、まあ」

「はは、そっかー」

そういったきりへらへらとナマエが笑っていると、エースがわけが分からないと言いたげに首をかしげてナマエの裾を引く。

「勘違いってなんだよ」

「好きなやつと番になれた夢を見たって言ったら、いつの間にかそういうことになってた」

へらり。締りのない顔で、本当になんねーかな、なんてナマエははにかむように言った。

それに興味をそそられたように身を乗り出したエースが、犬が餌を強請るような仕草でナマエを覗き込む。

「どんな奴なの」

「んー」

律儀にその問い掛けに悩んだナマエは、少しの思案の後、照れたように笑いながら答えた。

「小動物みてぇ」